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「さよなら」の女たちのtakのレビュー・感想・評価

「さよなら」の女たち(1987年製作の映画)
3.4
大学4年の夏。就活が全然うまくいってなかった。オレこだわりすぎちゃったのかなぁ、と周囲が決まっていく中、焦りと不安でいっぱいだった。

そんなある日の移動で高速バスに乗った。バス車内で流れてたビデオで、映画をボーっと観ていた。だんだん心が掴まれて気づくと泣きそうになっていた。しばらくして、どうしても気になってビデオ借りて再度観た。将来を考えて悩みの真っ只中にいたあの日に観たことが、この映画に出会えた意義だったのかもな、と今としては思う。

その映画は、大森一樹監督、斉藤由貴主演の「「さよなら」の女たち」。

大学卒業が近づいていた主人公郁子はバイト先を突然首になった。春からそこで正社員として働く予定だったがそれもなくなる。教師をしている父親に相談すると、父は「俺は歌手としてカムバックする!お前は自分で道を見つけろ」と言われる。母も「イルカの調教師になる」と言い出して、一家はバラバラに。悩んだ郁子は、友人を訪ねて宝塚へ。税理士の女性と3人でフロイラインと呼ばれる洋館で、女だけの生活を始めることになる。

ヤクザから追われる友人、洋館を狙う地上げ屋が登場して、物語は最初思いもしなかった展開。そしてヒロインの旅立ちと家族再生の物語へと進んでいく。

あれからウン十年経った今観ると、父と母の第二の人生に心惹かれてしまうかもな。大森一樹の斉藤由貴三部作の中でも、それまでの2作品とはちょっと違う。ヒロイン中心の青春ストーリーでなく、多くの登場人物が次々に絡んで、ヒロインそっちのけで事件やトラブルが次々と起こる。その騒ぎを乗り越えてヒロインが成長していく様子が、この映画の魅力。

「「さよなら」の女たち」のヒロインの姿は、社会人になることで人や日々の出来事に揉まれていくこれからの僕でもあった。バスの座席で揺られながら、この映画に自分を重ねていたっけ。

宝塚ファンならもっと楽しめる映画なんだろうけど、そこは知識不足。でも音楽がいい。ソロ歌手としてカムバックした伊武雅刀が歌う「さよなら」、エンディングで流れる斉藤由貴の「さよなら」が素敵だ。音楽担当はムーンライダーズのかしぶち哲郎。

鑑賞記録は2度目を観た年月を記す。
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