はづき

ドゥ・ザ・ライト・シングのはづきのレビュー・感想・評価

ドゥ・ザ・ライト・シング(1989年製作の映画)
4.0
真夏のとても暑いある一日の出来事の記録的な映画だ。

序盤は、舞台となる地域と主な登場人物が、地域の日常風景と共に紹介される。
舞台は、ニューヨークのブルックリン。アフリカ系アメリカ人が多く住む黒人街。黒人が多い街だけど、イタリア系、アジア系などその他の人種も住んでいることがわかる。

喧嘩はありつつも、過ぎていくなんてことのない日常風景。そんな風景の中にも、各々が別の人種に対して偏見を抱き、自らの民族と他の民族(人種)ことが見え隠れしていた。

とても暑い日のお話だからか、人種間の肌の色の違いを強調するためか、物語のその後を暗示するためなのか、終始画面には赤いフィルターがかかっている。

街の中心のようなサルの店。
サルの店の道向こう側には、韓国人夫婦の店が見える。夫婦の店の道向こう側には、日がな呑んだくれている3人組がたむろっている赤い壁がある。要は、一区画の出来事だということだ。

サルの店内の出来事でも、窓の向こう側では韓国人夫婦が働いているし、スマイリーが歩いていたりする。その日常感がたまらない。日常の些細な諍いが、非日常の争いへと繋がっていくのが非常にリアルだった。

この作品に、人種差別を扱う作品にありがちな絶対的な加害者・被害者はいない。

また、日頃差別にさらされ、「どうせ黒人だから上手かないんだ…」という卑屈な思考になっているアフリカ系の人物を登場させ、更にその人物に苦言を呈すのもアフリカ系の人物だ。アフリカ系の登場人物にコメントさせることで、観客側の一考を誘うことにも繋がっていると思う。
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