ゆーいち

インデペンデンス・デイのゆーいちのネタバレレビュー・内容・結末

インデペンデンス・デイ(1996年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

異星人の襲来に対しほぼ壊滅した人類が、アメリカをリーダーとしてアメリカの独立記念日に一斉反撃を行うという内容から、スポンサーがホワイトハウスのプロパガンダ映画とも空前絶後のおバカ映画とも言われる本作であるが、この映画が素晴らしいのはキッチリ馬鹿映画に振り切っている点にある。

違う切り口で戦争の悲劇を何度も描いては「考えさせられる」とか言いながら同じところをグルグル回っている評論家を尻目に、「戦争モンなんてこんなんでいいんだよ」と言わんばかりのカラッとした能天気さで映像の湿度をコントロールしている。

最初の侵略こそ強大な敵の脅威を見せつけるために優等生な映画作りをしているが、ウィル・スミスのグーパンあたりから空気が変わってくる。
エリア51の存在や「宇宙戦争」のオマージュであるウィルス攻撃のためにMacでハッキングなど、「これがシリアスなギャグか」と思わせる展開の連続である。
「人類を皆殺しにしてやる」と異星人がわざわざきちんとアメリカの正義を担保してくれるのも良い。戦隊ヒーローものの世界である。
当時のアメコミにおいても、そんなサンドバッグ宣言をしてくれる単純なヴィランはもはや主流ではない。

戦争で描かれる陰惨な悲劇は必ず人間の尊厳を生み、それが翻って守るべきものの為に戦争の美化を呼ぶが、こんな喜劇のような戦場映画を見た後に「俺も入隊したい」とか言ったら笑いものにされるか、「俺も俺も」とジョークとして受け取られるかどっちかだろう。
「トップガン」ぐらいのファンタジーがプロパガンダにはちょうどいいのであって、テクノロジー的にも次元の違う敵をガバガバ戦法で撃退するインデペンデンス・デイはプロパガンダとしては突き抜け過ぎなのである。

もちろん大統領夫人の死や大統領演説など、高揚を掻き立てる部分もあるが、大体「ケツの穴にぶちこんでやるぜ」で台無しになる。
特攻かました英雄の子供にかけられたのは「勇敢だった」の一言のみですぐに場面は英雄への帰還へと移る。自己犠牲礼賛に見せかけてとても意地が悪い。

ともかく、ほとんど行き当たりばったりの作戦で宇宙規模のジャイアントキリングを成功させる荒唐無稽さを存分に楽しめばいいし、その上で入隊したくなったら入隊すればいい。
無人島に映画1作だけ持って行っていい、と言われたら迷わず候補にあげたい1本。
ゆーいち

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