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ワーロックのNSのネタバレレビュー・内容・結末

ワーロック(1959年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

正義のない力と、力のない正義。
「私が法だ」という認識と「俺が法の番人だ」という認識の、似て非なる在り方。

単線的ならぬ複線的な物語の構図の中で、過渡期的な「私」と「公」の葛藤が個の実存の葛藤として、しかし飽くまで相関的な人物間のドラマとして描き出される。

相手が銃を抜いて判然たる殺意を見せれば、自分もはじめて銃を抜いて相手を撃ち殺す名分が立つ。だからこその決まり文句「銃を抜け」であり早撃ちなのだ、という西部劇的なセオリーの意味が、実感的に了解出来る。
そのアクションの中にこそ、銃で撃ち合うということをめぐって発現する「私」と「公」のせめぎ合いのドラマが際どく凝縮されている。
ここに於ける「私」と「公」の葛藤は、「無法」と「法」の対立でもある。

背後から、あるいは視界の外からの狙撃のアクションも何度か描かれる。だがそれはやはり「正々堂々」の撃ち合いには本来そぐわない行動として描かれる。
「私」と「公」、「無法」と「法」の境界線が暗黙の内にせめぎ合っている。

ちょっとした台詞の中に表される断片的なエピソードや言い回しだけでも、その人物が何を背負って今その時のその行動に及ぶのか、よく判る。

モーガンの死に際して、何故か突如として雷が鳴り、激しい雨が降り始める。
これはなんなのか。
「死人の前で口を開くな!」は、最低限の、同時に最大限のリスペクトの言葉に聞こえる。
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