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トーク・トゥ・ハーのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)
3.5
ペドロ・アルモドバル監督が、昏睡(植物)状態に陥った女性に抱く偏執的愛と、同じく昏睡状態に陥った別な女性へのもう一人の男性の愛を美しい純愛として描いたインモラルな愛のドラマ(問題作)。
原題:Hable con ella, (英)Talk to Her (2002)

スペインのマドリード。
バレエ・スタジオに通っていたアリシア(レオノール・ワトリング)は交通事故で昏睡(植物)状態になり、彼女を偏愛していた看護士のベニグノ(ハヴィエル・カマラ)が4年間介護を続けている。
一方、女闘牛士リディア(ロサリオ・フローレス)は闘牛に突かれて昏睡状態に陥り、同じ病院に運ばれて、彼女を愛するアルゼンチン人ジャーナリストのマルコ(ダリオ・グランディネッティ)が病院に泊まり込む。
 ベニグノはアリシアが好きだったサイレント映画や舞台を週に一度観劇し、眠り続ける彼女にあらすじや感想を語って聞かせて幸福感に浸る。
しかし、盲目的な愛(偏愛)が高じて、植物状態のアリシアと性交(レイプ)し、アリシアの生理が止まる…。
一方、リディアには前の恋人が現れる…。

その後の展開は見てのお楽しみだが、物語は、
「リディアとマルコ」で始まり、
「アリシアとベニグノ」を経て、
「マルコとアリシア」で終わる。

「話すことは意外に簡単だ。
何事も簡単なことはないわ。私はバレエの教師だもの」

自分に全く関心がなく昏睡(植物)状態で抵抗できない女性の身体を、男は4年間毎日眺め、4年間毎日触り、挙げ句の果てレイプし妊娠させる訳だが、 レイプ・シーンは、サイレント映画「縮みゆく恋人」(ムルナウ監督の「サンライズ」のアドモルバル監督によるパロディ)の映像を使い、オブラートに包むように"美しく"、如何にも純愛のように描かれている。
アドモルバル監督の倫理やモラルに捕らわれない作風(本作ではレイプという犯罪を純愛行為として否定しない描写など)については否定的な意見がある。
一方。映像作家としての力量と個性が一部から熱烈な人気になっている。

冒頭とラストを飾るのは、ドイツの前衛舞踏家ピナ・パウシュの舞台。
闘牛場シーンに挿入される曲はエリス・レジーナの「ポル・トーダ・ミーニャ・ヴィーダ~私の人生のすべて」。
ブラジルを代表する歌手カエターノ・ヴェローゾ(本人が特別出演)の歌「ククルクク・パロマ」(トマス・メンデス作)が聞ける。
なお、アリシアのバレエ教師役をジェラルディン・チャップリンが演じている。 
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