円柱野郎

母なる証明の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

母なる証明(2009年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

歳は20代といった感じながら、純真無垢…というかちょっと足りない人物である主人公の息子。母親である主人公はそんな息子を溺愛している。半ば偏執的な愛情だけれども、その一念さをキム・ヘジャはうまく演じてますね。
オープニングの草原で主人公が一人で踊るシーン。観客にはどんな状況なのかよくわからないんだけど、その曇った表情には合わない踊りと曲が何とも言えず、この作品に対する妙な違和感を伝えてくる。最後まで観れば、実はそのシーンは主人公が真実を知った後の様子だったわけで、ああ、なるほどなあ…と。
ストーリーの仕掛け自体は別段目新しいものでもないかな。サスペンスとしては及第点ではあるけど、話の強引さを感じた部分もある。だけど、愛情とか、正義とか、そんなものの曖昧さが全編を覆い、愛情ゆえの闇が目立つ話に見応えはあった。
母として息子の無実を信じ、してはならないことまでした主人公。真犯人として捕まった人物に「母はいるか」と尋ね、「いない」と聞いて泣き崩れる主人公。我が子のためなら他の犠牲はいとわない、それこそが“母であること”ということか。だから“真犯人”に母がいないと聞いて真実が暴かれることはもうないと安堵したのだろう。だけど、その墓まで持っていこうとした真実は、“純真無垢”なその我が子によって母の目の前に再び突きつけられる。悲しい人たちのなんと残酷な話だろうか。
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