MissyEllio

パラダイス・ナウのMissyEllioのレビュー・感想・評価

パラダイス・ナウ(2005年製作の映画)
3.8
『ホドロフスキーのDUNE』がUPLINKさん配給だったので、新作『オマール、最後の選択』公開を前に、ハニ・アブ・アサド監督の社会派映画をレビュー。

イスラエル軍に包囲されたパレスチナ西岸のサイードとハーレドはパレスチナ過激派の自爆テロ実行犯に指名される。英雄の娘スーハは非暴力人権運動を訴えるが……。

極東の僕たちには、いくらニュースで目にしても、なかなか想像しがたい現状です。随分前に、バックパックで東欧から中東を見てきましたが、やはり旅行者には、その一片も理解するには至りませんでした。

本作では、パレスチナ側を擁護する訳でもなく、ただそこに生きる若者が、否応なく凶行に向かわざるを得なくなる葛藤と苦悩を描く訳ですが、僕らの持つステレオタイプな過激派自爆テロ犯のイメージを『生身の人間』として、少しは身近に考える余地を与えてくれると思います。

湾岸戦争以降、宗教間の軋轢や摩擦について、性格やその成り立ちを遡って勉強しても、やはりしっくりはこないもので、こういう内側から描かれた映画などを踏まえ知ることで、視野を広く物事を見るきっかけになる。映画を始め、表現活動の意義とはそういったことですよね。

新作『オマール、最後の選択』はパレスチナの生々しい現状に加え、愛と尊厳をテーマに、その遣る瀬無さを観る者に強烈に訴えかける作品で、是非観て頂きたいです。

日本人にとっては『対岸の火事』かも知れませんが、そこに生きる人たちも、僕らと同じ様に悩みや葛藤を抱えた人であることを、忘れちゃいけませんね。
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