まっつ

スターシップ・トゥルーパーズのまっつのレビュー・感想・評価

2.5
自宅PCにてBlu-rayで観賞。監督のポール・ヴァーホーベンの作品も脚本のエドワード・ニューマイヤーの作品も共に初見。
原作であるロバート・A・ハインライン『宇宙の戦士』も未読です。

空虚さが通底して流れている映画でした。キャラクターが唐突に、湿度低く死んでいく様子や、「市民は人類の安全を、自らの責任とする勇気を持っている」といった、良いこと言ってるっぽいけど実質何も言ってない台詞、前半1時間をみっちり使って描かれる、主人公グループが戦線に駆り出されるまでの悲喜交々。それらがどれも空虚かつ軽く描かれ、それ故に徹底して他人事のように感じられます。でもそういった風に『軽さ』を突き詰めることこそ、監督の狙いだったのかも?と思いました。

軍隊ものの軍隊らしさ(それは時にマッチョイズムとイコールで結ばれる)をそのままシリアスに描くのではなく、湿度を持たせず、かつ誇張して描く。するとそれを観ている側の胸の内には何が起こるか。恐らく『(笑)』といった感情だと思います。また、軽薄な動機で機動歩兵に入隊する主人公、バクズと意思疎通を行うでもなく(テレパシーを使える奴もいるのに何故それを平和利用できない!)ただ『やられたらやり返す』の原理で牙を向ける軍隊の方針、恋人が死んだっていうのに助けられた後はケロッとしていたあの人など、感情移入をさせ辛いキャラクターやシステムを導入することで、観客の『(笑)』感を増幅させています。そしてこの『(笑)』感から何が生まれるか。それはきっと『戦争ってダサくね(笑)』といった感情です。監督はこういった『笑い』が生み出す効果を、正確に理解していたのではないでしょうか。

芸術で何かを批判しようとする時、そこにはある種のシリアスさが伴います。「震災を機にあの人の表現が唐突に変わってしまった」と感じた事のある人も少なくないのではと思います。それは、それ以前の作品からは立ち上ってこなかった意思が露骨に表出するからであり、そこに拒否感を感じる人が多いのも納得できます。しかしエンターテイメントなら、特に『笑い』なら、もしかすると他のどんな表現よりも的確かつ優秀に、観客が忌避感を感じることなく批判の意思を受け取れるのではないでしょうか。だってその意思は『(笑)』でコーティングされているから。

この映画、恐らくは(リアルタイムで観てない故にこの時期何が起こったか把握してないです、すみません)がっつり反戦映画です。しかしそのメッセージは乾いた笑いでコーティングされる。しかしその為に他のどんな表現よりも強くはっきりと、観客一人一人に『戦争ダサいwww』といった感情を根付かせる事に成功しているのではないかと思いました。間接的な表現の持つ力はここにあります。
ゴア描写(ラストの某キャラの死に方が本当アホwww)にキャラクター、広報のニュースに至るまであらゆる要素を軽薄なトーンで統一したこの映画はその実、立派な戦争へのカウンターとして機能しうる作品だと思いました。
まっつ

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