けーはち

遊星からの物体Xのけーはちのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
3.5
さすがに今見る限りは、テンポはゆったりだし、新味は無いよね。でも、偉大なSFホラーだ。

★平和なアメリカの南極基地に犬を執拗に撃ちまくるノルウェー国籍のヘリが襲来だ!震える手でダイナマイトを投げる男は、自ら乗ってきたヘリを誤って爆破しちゃうわ、南極基地の隊員を問答無用で撃つわで、異様な狂乱ぶり!その場は正当防衛で彼を殺すしかなかった。その後、ノルウェー基地に連絡を試みても繋がらず。仕方なく数人で足取りを辿ってみることに。「スウェーデン?」「ノルウェーだよ」みたいな少々緩いノリで赴いた無人の基地に残る殺戮の痕跡と何かを掘り返した穴を発見し、彼らは釈然としない面持ちで戻るのだった。

★それから事件が始まる。拾ってきた犬は何と、顎ガバーッ!触手ブシャーッ!体液ゴバーッ!の異形の怪物に変化!調べていくうちに、「いろんな生物に寄生して擬態する異星生物がいて、南極の寒さで休眠状態だったのを、ノルウェーの隊員が掘り返して活動状態にしちゃったんじゃ?」と推測。人狼ゲームよろしくWho's Whoの始まりだ。誰が寄生されたか分からないので、恐怖で狂乱する隊員、猜疑心で殺しあう隊員、どうにもヤバい状況。どうやって寄生された者を特定するのか!

★ショッキング、グロテスクなモンスターが活躍(?)するパニック・ホラーを起点に、クローズド・サークルのミステリ色を帯びた人間関係のせめぎ合い、疑心暗鬼、そして事件!──「一番怖いのは人間の心」というサイコ・サスペンス的要素を導きつつ最後にはカタストロフィが訪れる(もっとも本作は破滅一歩手前だが何とも言い切れない結末に至る)。今のホラーの定番の源流と言える。

★いろんな生き物に寄生してドロドロに変形させる醜怪なクリーチャーデザインや、血液や細胞が分離独立して動く寄生生物というアイデアも含めて、後発のさまざまな作品に対する影響度の高さは、それだけ本作が名作である証左だと思う。