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遊星からの物体XのKOのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.9
 小学校の時だった。お盆に母親の実家に泊まりに行った。お盆なので、お墓参りに行く。母親の実家は周りが田んぼや畑に囲まれた集落にあり、そこ中にあるお寺へと向かった。日没前に従兄弟と祖母、母親と弟とお寺に向かって歩く。田舎なので、車で30分の市街地(とは言っても小さな地方都市なのだが。)に住む自分にとっては、どこからか聞こえる鳥の声や虫の鳴き声と薄暗い景色になんとも言えない恐怖を感じた。墓に着くと祖母が「◯◯から(母の)と(私)と(弟)が墓参りに来てくれたぞ〜」と言いながら、祖父のお墓に水をかけた後に合掌していた。
 私は夜に冷房が効きすぎた部屋でその1日を思い出していた。単純に「お盆になると帰ってくる」と言う話にびびっていたのだ。自分の先祖を怖がるとは失礼な子供だが、単純に怖かった。外は田舎なので街灯もなく真っ暗だし、皆が寝静まったこの暗闇には何かいるのではないか。そう思うとなかなか寝付けなかった。自分の家から母の実家までの何度も行き来したことのある道のりが恐ろしく長い距離に思えた。
 長々と自分の思い出を書き連ねたが、本来は安全であるはずの建物の中に閉じ込められて、異形の生物から襲われるというのは本当に恐ろしい。ましてや、自分たちに襲いかかる異形の生物は、他の生き物に同化する。誰かがもうすでにその人間ではないのかもしれない。信じられるのは自分だけ。そんな環境だ。
 「密室で異形の生物から襲われる」。ありきたりな展開といえばそうだが、1982年の映画でも十分に恐怖を感じられる。自分は小さい頃の記憶を思い出してしまった。もう奇跡のような存在の映画だと思う。
 
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