てるーん

遊星からの物体Xのてるーんのネタバレレビュー・内容・結末

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

既に「生き物に」取りつかれた犬をノルウェー隊が追ってアメリカの南極基地に迫る…という導入はインパクトがあると共にスピード感があって面白く、その後はドミノ倒し的に基地内の人間が生き物に取りつかれていく、と流れの絶えないストーリー展開になっていた良かった所。閉鎖的な空間でストーリーが繰り広げられること、また登場人物の視点から段階的に明かされていく謎などから、作品内への没入感も高かった。

さらに、誰が生き物に取りつかれているか分からない、そしてその生き物はいつ本性を見せるのか、という緊張感が常に作品内に漂っており、緊迫したセリフ回しや演出、グロテスクながらも細部までリアリティを追求したクリーチャーデザインなど、画面から目が離せない工夫がされていたのも良かったと感じる。

ただ、登場人物が多いこと、またそれぞれの個性も強くないことから登場人物を覚えにくく、それ故に感情移入もしづらかったため、あまり誰が生き物に取りつかれているか分からないという点にあまり重大性を感じられない部分もあった。最後に生き残った2人で燃える基地と運命を共にするシーンも、そこだけ切り取れば良かったと感じたものの、その2人の人物像も見えやすかったとは言えず、また2人の関係性も劇中では僅かしか描写されていなかったので、100%感動できるシーンになっていなかったのが惜しかった所。

また生き物が生々しいクリーチャーであることに反して、その生き物が地球にやってきたのはいかにもSFチックなUFOであったりと、世界観にややズレがあった所も引っかかった。UFOではなく隕石に付着して地球を訪れた、という設定の方がまだ説得力を感じられたかもしれない。

総じて、緊張感が絶えず常にストーリーが動いていることから退屈することはなく、むしろグロテスクながら美しいクリーチャーデザイン等に感銘する部分もあったものの、登場人物の個性が弱かったために感情移入しづらく、やや作品に乗り切れなかったというのも事実だと感じた。
しかし当時にしては斬新な演出や美術、設定も目立ち、後世の作品に影響を与えたのも頷ける1作だった。
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