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遊星からの物体XのYYamadaのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
3.7
【ホラー映画のススメ】
◆作品名:
遊星からの物体X (1982)
◆映倫区分 / 日本 : PG12
◆ホラーの要素
 非人間的な何かが視聴者の恐怖を煽る
◆恐怖のレベル
 精神的恐怖 ★★★☆☆
 肉体的恐怖 ★★★☆☆
 知識的恐怖 ★★☆☆☆

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・南極の大雪原。一匹の犬がアメリカの観測隊基地に現れるが、犬の正体は10万年前に宇宙から飛来し、氷の下で眠っていた生命体だった。
・生命体は接触した生物に同化する能力をもっており、次々と観測隊員に姿を変えていく。このままでは、およそ2万7000時間で地球上の全人類が同化されるということがわかり、基地は通信手段、交通手段を断って孤立。そんな状況下で、隊員たちは次第に相手が生命体に同化されているのではないかと疑心暗鬼に包まれていく…。

〈見処〉
①南極大陸の氷の下から
 宇宙最大の恐怖が蘇える——
・『遊星からの物体X』(原題: The Thing)は、1982年に製作されたSFホラー。1951年の映画『遊星よりの物体X』に続く、ジョン・W・キャンベルの短編SF小説『影が行く』の2度目の映画化作品。
・極寒の南極観測基地という閉ざされた空間を舞台に、宇宙から飛来した生命体に襲われる観測隊員たちの恐怖を描いた本作は『E.T.』『ブレードランナー』とともに「1982年に製作された傑作SF」として、後世に多大なる影響を与えている作品。
・もともとは、1979年のSFホラー『エイリアン』の成功により、企画にゴーサインが出たものの、脚本化と製作に難航。
・とくに特殊効果の作業は公開直前まで及び、全米公開がスティーヴン・スピルバーグの『E.T.』と同時期に重なり、興行的な成功を収めることが出来なかったが、当時弱冠22歳の特殊メイクアップアーティストであったロブ・ボッティンによる、おぞましく斬新なクリーチャーデザインは、高く評価された。
・本作の音楽は、イタリアの名匠エンニオ・モリコーネ。
・2018年10月にデジタルリマスター版でリバイバル公開された。

②J.カーペンターとK.ラッセル
・本作の監督であるジョン・カーペンターが監督を志したのは、4歳の時に観た本作のリメイク元作品『遊星よりの物体X』(1951)の影響によるもの。
・長編デビュー作『ダーク・スター』(1974)、『ジョン・カーペンターの要塞警察』(1976)で、低予算でも良質のエンタテイメントが作れることを実証した彼は、1978年のスプラッターホラー映画『ハロウィン』の製作により、人気監督の評価を受けたが、そのカーペンターの代表作は本作と言われている。
・一方、元ニューヨーク・ヤンキース所属の野球選手を父に持つカート・ラッセルは、1960年代に子役として芸能活動をしていたが、1970年代には野球選手に転向。マイナーリーグで活躍したが、肩の怪我が原因で俳優業に戻った。
・ラッセルの転機となったのは、1979年にジョン・カーペンター監督が演出したテレビ映画『ザ・シンガー』でエルビス・プレスリー役に抜擢され、エミー賞主演男優賞候補となったことから。
・以降、ジョン・カーペンターと意気投合したカート・ラッセルは、本作以外にも『ニューヨーク1997』(1981)、『ゴーストハンターズ』(1986)『エスケープ・フロム・L.A.』(1996)など、多数のジョン・カーペンター作品に主演。現在でもふたりの友情は続き、家族ぐるみの付き合いをしているそうだ。

③結び…本作の見処は?
◎: SFホラーとしての鑑賞した感想は、現在のモノサシでは「ごく平凡」。しかしながら、密室空間で疑心暗鬼に追い込まれる惨劇を描いた本作は「40年前の作品」 。評価が平凡に思えるのは、(『エイリアン』を除き)、本作以降に製作された映画の既視感によるもの。当時の最先端映画は、今でも娯楽作品として通用している裏返し。
◎: 後世に間違いなく影響を与えているクリチャーは、いまみてもグロテスク。
○: そのようなシーンはないが、顔から光が放たれる人物が描いたポスターは、大変カッコいい。
○: ラストの曖昧な終わり方は、『ブレードランナー』同様に余韻を残すエンディング。
▲: 登場人物が多く、セリフに登場する人名についてゆけない。
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