せみ多論

遊星からの物体Xのせみ多論のレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
4.2
南極基地の調査部隊と外宇宙生命体とを描いたSFホラーの大名作。もはや今更過ぎるとは思いますが、本当に面白い。

南極基地という閉鎖的な舞台、取り込んだ生命体の姿そっくりに変異する『それ』の衝撃的な造形、SFホラーと同時に、閉鎖された空間で誰が『それ』になってしまっているのかを皆が疑いだす本格ミステリー作品にも負けない緊張感。
そして監督は意図していなかったという、偶然の産物であるあのラストシーンのインパクト。勿論以前までのシーンを注意深く見ていれば惑わされないようですが、このシーンで意識してしまって、あれ・・・?と思ってしまうのが普通でしょう。

『それ』の造詣があまりにも気持ち悪すぎて、苦手な方にはお勧めしずらいですが、話の作りや緊張感、恐怖の演出は抜群だと思います。
極限状態の主人公が撃ち殺した人間が『それ』でなかったにも拘らず、主人公は早く『それ』をみつけないと位の反応しかしないことの恐怖。皆もちょっと咎める程度。『それ』に取り込まれていない、人間、であるにも拘らず、その失われている人間性にゾッとする。

30年以上前の映画でも未だ色あせない魅力がありますね。しかしまぁ『それ』のデザインを手がけた、ロブ・ボッティンは素晴らしいですね。あんなの普通じゃないですよ。もちろんいい意味で。
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