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地獄の黙示録のKAJI77のレビュー・感想・評価

地獄の黙示録(1979年製作の映画)
5.0
「人間の、この巨大な渦の中にいる時ほど、深い地獄を味わったことはない」
ジャン・アンリ・ファーブル


『ゴッドファーザー』を手がけた伝説的巨匠、フランシス・フォード・コッポラ監督が垣間見たベトナム戦争の譫妄、それが『地獄の黙示録』(1979)です。

今まで観たどの戦争映画よりも衝撃的で、狂気とスレスレのところにある、あまりにも目映いその芸術性に、完全に飲み込まれてしまう。まさに唖然。

この映画は舞台をベトナム戦争に設定してはいるけど、他の戦争映画よりも更に普遍的な稟性のもとに成り立っている。

それはつまり、「地獄」の精髄。

「地獄」とは、"地"にありながら"罪の集まる空間"のこと。
世界的作家であるバーナード・ショーは、著書『人と超人』(1901)の中で次のように述べてる。


「地獄は名誉・義務・正義、その他の怖ろしい徳の故郷なのだ。地上の悪事はすべて、こういう名のもとに犯される。」


この映画が戯曲化した「悪徳」とは、人が生きる為に犯した罪の姿であり、人を殺す為に犯した罪の姿であり、人を生かす為に犯した罪の姿。
「人を殺す悪魔」と、「"人を殺す人"を殺す悪魔」
この全てを、「動く絵画」とも言い得る神秘的な画面をもって描き上げたコッポラ監督には哲学性すら感じます。後半なんてまるでギリシア神話の世界への旅に出たかのような没入感を憶える。

遺憾にも今の僕如きの語彙や感性では、筆舌に尽くし難い。
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