tomoo

悲情城市のtomooのレビュー・感想・評価

悲情城市(1989年製作の映画)
3.0
かなり以前に観たけれどもほとんど忘れてしまっていた。臺灣の歴史と中国語の勉強を兼ねて中文字幕で鑑賞。中国語も初級レベルだし、しかも話している言葉の多くは臺語なのであまり詳細は理解はできないけれど、あらすじの事前学習と美しい映像が補完してくれた。
戦後日本の撤退で中華民国がやってきた当時、二二八事件が発生した頃の臺灣。舞台は臺灣北部の山里・九份。
この映画では、臺灣語、日本語、北京語などの言語が混じっている。それは臺灣の侵略(統治?)の歴史を物語っている。言葉というのは民族のidentityに他ならない。
臺灣の人々の苦しみや悲しみの思いは、過去に侵略をされたことのない、ほとんどの日本人にとっては理解しがたいものであろう。もし明日から日本では日本語を廃止し中国語または韓国語で話せと言われても想像さえできない。
侯孝賢の一歩引いた映像は、その大きく揺さぶられた歴史の渦の中で、人々が生き抜いている様子を切り取って見せてくれる。まるで観客は淡々と語られる人々の生活の史実を俯瞰から覗いているかのようだ。
人々は力強く生き、風景は変わらず美しい。
今や『千と千尋の神隠し』で有名になってしまった九份ではあるけれど『悲情城市』も同じく忘れてはならない映画である。

まだ勉強不足で理解できていないけれど臺灣には多くの民族がいるし、客家などそれぞれの時代に臺灣に移り住んだ人々がいて、その伝統が残っていたりする。
現在でさえも不安定な状況ではあるけれど、どうか将来は平安なる臺灣であってほしい。
tomoo

tomoo