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下妻物語のCinemanのレビュー・感想・評価

下妻物語(2004年製作の映画)
4.0
お気に入りの役者荒川良々を初めて観たのが本作品です。

ひょんなことから出会った性格も見た目も生き方も真逆な二人の女子高生の過ごした一夏を描いたおバカ映画タッチでちょっぴり切ない青春映画です。

一見幼児体型でほんわかしたロリータ少女ですが芯の強い竜ケ崎桃子(深田恭子)と暴走族レディースでぶいぶいホコリをまき散らしてバイク(原付きだけど)を乗り回すが寂しがり屋の白百合イチゴ(土屋アンナ)。
ある夏の日、二人が出会います。

【Prologue】
暗転の画面に複数のオートバイの爆音が被さりフェード・インするとアニメの画面。

「うわ〜お!あたいのマシーンが火を吹くぜ」
のセリフが吐き出されパンク・ロック風テーマミュージックが鳴り響く。

疾走するバイクの絵柄にローマ字で出演者のクレジット。
いつの間にか森の中を疾走するぶれぶれのバイクのアニメが実写にすり替わっている。

原付きバイクの乗り手はロリータファションを着た少女。
バイクが森を抜けると大きな大仏が現れる。
スピードメーターは40キロ(原付きなので)に近づく。

広々とした畑のあぜ道を疾走する原付きに乗って白いヒラヒラ・コスプレ・ロリータ・ファションをなびかせている少女は交差点で横から走ってきた八百屋の軽トラと衝突。

軽トラのフロントガラスに跳ね付けられて宙を舞う少女。

四方に飛び散るキャベツ

少女の横顔アップ。
✽少女のモノローグ
〈さようならダメおやじ、さようならおバアさま、さようなら牛久の大仏様、さようならベイビー・ザ・スターシャイン・ブライトのお洋服〉

少女の白いドレスのポケットからこぼれ落ちるパチンコ玉。
キャベツとパチンコ玉が宙を舞う。

✽少女のモノローグ
〈さようならイチゴ、いまさら言っても遅すぎるけどで出来ればワタシはロココ時代のおフランスに生まれたかった〉

空から落下するパチンコ玉

(ストップモーション)
下妻物語


✽少女のモノローグ
〈ってわけにもいかないので時間をちょっと、チョコッとだけ戻します〉

急速に画面が巻き戻されて優雅な音楽をバックに18世紀ベルサイユ宮殿の静止画にズームアップ。

ー18 Century Bersaiesー
(18世紀ベルサイユ)

ハリボテ的当時の風景に被さり少女のモノローグ。
ロココ調の絵画、彫刻が画面に流れる。

✽少女のモノローグ
〈ロココ、それは18世紀後半のフランスを支配したもっとも優雅でゼイタクな時代、チョー真面目なバロックのあとに出現したチョー軽薄な芸術スタイル、ロココはそのあまりのバカっぽさから歴史の闇に葬り去られ世界史の授業でもほとんど触れられることもありません〉

〈評論家たちはこの時代のゲイジュツを甘ったるくて安易で化粧っぽくて下品、淫らとコケおろします、だけど人生なんて甘いお菓子とおんなじ。スイートな夢の世界に溺れる、溺れまくる。それがロココの心なのです〉

〈ただ見た目の美しさのためだけに腰をギンギンに締め上げ、そのため呼吸困難を起こす。でもそれがチョーカワイイ〜 (フランス男の猫なで声)とされた時代、何というアホらしさ。でも気持ちがよければOKと朝から晩までお淫らざんまい。ちょっと飽きたら大流行の刺繍のお時間、それも飽きたらお淫ら再開やっぱり飽きたら田舎をお散歩〉

美しい森ノ中を日傘をさして走る少女。

〈ワタシだってロココに身を捧げた女。フリル全開のお洋服で優雅に田園地帯をお散歩といきたいけれど〉

画面変わってあぜ道に呆然と立つ少女。
目の前に牛が道を塞いでいる。

少女の顔のアップでカメラに語りかける。

〈ダメ、無理、だってここは21世紀の茨城県、その名も下妻、田園というよりただの田んぼ〉

牛がウンチする。
あぜ道に日傘をさして立つ少女

〈ワタシはここで生きてるんです、ゲッ!ウンコふんじゃった〉

(クレジット)ー21 CENTURY SHIMOTSUMAー
(21世紀 下妻)



ここまで4分50秒のアバンタイトルです。
ここからロリータ・フアッションを着たお嬢様、高校2年生の竜ヶ崎桃子(深田恭子)と個性的な人たちの日々が語られます。

✽桃子のモノローグ
〈自宅から下妻駅まで歩いて30分。自転車なら速いのだけれどそんなのダメ、だって美しくないんだものロリータが、ママチャリを漕ぐ姿なんて〉

ロリータ・ファションに日傘をさして優雅に歩く桃子にお馴染みの八百屋(荒川良々)が声をかけます。

「どこまで行くの?」
「ちょっと東京まで」
「東京まで?何しに」
「お洋服を買いに」
「服買うのになんでわざわざ東京行くの?JUSCOがあんのに」
「JUSCOってスーパーじゃん」
「何も知らねえんだなオメェは、下妻のJUSCO はスーパーなんてもんじゃねぇ〜の、何だってある、なんもかんも揃ってる。東京のPARCO以上だ」

八百屋さんも集まっている主婦たちもみんなJUSCOで買った服をニコニコ自慢げに見せるコマーシャルカット。

✽桃子のモノローグ
〈この街の人間は完全に狂ってます〉

このシーンで初めて荒川良々という俳優を見ました。
昨日の『ピンポン』の卓球部の主将です。
劇団の役者です。
うまいとか下手とかを突き抜けて作品の絶妙なスパイスとなる圧倒的な存在感が大好きになりました。

✽桃子のモノローグ
〈下妻から東京へはまず常総線というローカル線に乗り取手まででなくてはなりません。 電車は一時間にたった2本〉
〈では電車が来るまで私のプロフィールでも〉

電車の待合室のテレビのバラエティ・ショーのアナウンサーが「ではご覧下さい」とコメントする。

 竜ケ崎桃子 誕生秘話

というタイトルがテレビに映る。



本作品のネタバレ要素すれすれの【Trivia & Topics】などもnoteに書いています。
よろしかったらそちらもご笑覧下さい。

【乱れ撃ちシネnote Vol.5 22.09.30】
https://onl.sc/nbNt7Gu
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