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世界名作童話 白鳥の湖のkanakoのレビュー・感想・評価

世界名作童話 白鳥の湖(1981年製作の映画)
5.0
私にとって人生初の"スクリーン鑑賞"作品。

それは"映画館"ではなく、小学校の特別授業での鑑賞だった。
今にして思えば、それほど大きくはないロールスクリーンなのだと思うが、それまで家の小さなテレビで、再放送される映画しか観たことのなかった私にとって、本当に衝撃的な体験だった。

この『白鳥の湖』は私の心を激しく揺さぶり、クライマックスに向け大音量で流れる「白鳥の湖」に、私は震えた。(その頃の私には大音量だった)
"震えた"とは決して比喩ではなく、涙と鼻水が尋常じゃなく出ているのを必死で隠し、体育座りの背中を丸められる限り丸めたが、嗚咽で肩が激しく揺れ、文字通り身体が震えていた。

自分が"こんな状態"になっているのが、学校の一室であることが信じられないような気持ちだったのと、なぜ他の子が嗚咽せずいられているのかが、低学年で幼いながらも不思議だったのを覚えている。

この『白鳥の湖』の体験は、私にとって強烈なものだったが、その後、同級生含め誰とも共有できたことがなく、大人になってからも時折思い出すことがあったが、その度に「あれは本当にあったことだったのだろうか、、」というような思いになり、私の中でまさに「幻の作品」となっていた。

それがある日、、、"それ"は突然やってきた。
Amazonプライムビデオに『白鳥の湖』のジャケットを見つけた。
「へ?」と、理解するまで一瞬間があったが、もう、それはそれは言いようのない嬉しさだった。
あまりに嬉しくて、なんだかすぐには観られずにいた。

再鑑賞してみたときは、なんとも不思議な気分だった。けれど、子どもの時感じた"素晴らしさ"は色褪せていなかった。

白鳥オデットの声優は竹下景子。
王子ジークフリートは志垣太郎だ。
子どもの私はもちろんそんなことは知らなかったが、大人になってそれを知り、改めて素敵な作品だなと思った。

大げさなようだが、私の人生の根底に、この『白鳥の湖』があるように思う。
『白鳥の湖』を観て嗚咽した、あの子どもの時の私が、今の私を支えてくれてるのではないか、、などと考えたりする。
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