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エル・スールの&yのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
4.3
【2014/2/11:ユーロスペース】お恥ずかしながら初見では解釈しきれない。この長い映像詩をたった一度の鑑賞で理解するのは難しい。でも、繰り返し観て自分なりの解釈を探していきたいと思える作品。
テーマとしては、時間の経過によって変化するものとそれに対峙する人々の話であり、「過去について」の話であるとも言えるのかな。
過去に囚われている人(=父)と少女時代の自分を、成長した娘が回想するという、過去に対して二重の構造で語るので、全編に渡って「すべては過去のこと」というある種の諦観が支配しており、そのためか幸せな日々の描写すらスッキリ晴れない曇り空みたいな雰囲気。
物心ついた頃からすでに完璧な存在として完結していた父も、実は父である以前に一人の男であり人間であり、自分が触れることなどできない過去を持った存在であること。自分も「成長」という名のもとに過去を積み上げていくことからは逃れられないこと。沈黙の抵抗に沈黙で答えた父とか、父との最後の食事で父が言う「次の授業をサボってもっと一緒にいよう」という提案はきっと過去にあの女性にも言ったことなのかなとか、隣室の結婚式会場から流れるあの曲を父はどんな風に聴いたのかなとか。様々なシーンに、その奥の意味付けまでわからなくてもグッときて、美しい画面ごと釘付けになってしまう。カメラワークも面白いし。
この作品を深く探ることで、「ミツバチのささやき」にもまた異なる解釈が生まれそう。批評家めいた観方は楽しくないし興味ないけど、エリセの作品はもっと知りたい!探りたい!欲を刺激するなあ。(スコアは、まだ読み切れてないから、ってことで低めです。)
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