サプライズ

エル・スールのサプライズのレビュー・感想・評価

エル・スール(1982年製作の映画)
4.0
父にとってのエル・スール

「瞳をとじて」が記憶に新しい、ビクトル・エリセの監督2作品目。この映画も、どのシーンも部屋に飾りたくなるほど美しく、自然と心奪われてしまう底知れぬ魅力があった。年をとっていくに連れて深みが増していくストーリーだし、主人公・エストレリャの父のような存在は身近に居ないため共感はしずらかったけど、全編に漂う不穏な空気と緊張感のあるショットに惹き付けられ、芸術的にものすごく好きな映画だった。刺さる人はもっと刺さるだろうな。自分は何も知らなかったんだ、と察する瞬間がすごく切なくてやるせなくなる。

ビクトル・エリセ監督作はかなり間の多くて静かなんだけど、ひとつひとつが見事に洗練されているし、一切の無駄がない。後半のシーンはほとんどが前半のシーンとの対比だし、どの場面でもエストレリャの心の動きを繊細に描いている。小さな子供が持つ、不安と恐怖。自分は父にとってどんな存在だったのか。父はエル・スール(意味:南)に何を残していったのか。明確な答えが提示されないのも普通はモヤモヤが残るのに、この映画においてはまた見たいと思わせてくれる。大好きな監督。「ミツバチのささやき」も見ないと。

2024-134
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