このレビューはネタバレを含みます
戦後最初の女性死刑囚、小林カウをモデルに、大幅に美化しまくって作ったらしい作品。
吉永小百合初の悪女ということだったらしいけど、聖女の受難を描いたという感じ。殺人をしようが汚れない女として描いてある。
愛を求めて、男たちの愛と嫉妬と性欲に翻弄されて、受動的に結果的にこうなってしまった…。能動的に女を利用していたといわれる小林カウ的な要素は皆無、というか、自我がないのかなというレベルで、それなのに彼女にとって利益になるようなことばかりが起きるのはちょっと引き寄せがすぎて、ストーリーとしては破綻しかけてる気がするけど、まわりの俳優陣が骨太で映画として成立している。
吉永小百合の美貌と儚さをとにかく崇めて消費する映画なので、これじゃ見られないという人も多いと思う。でも、中途半端に吉永小百合が苦手な人や、吉永小百合の大ファンには、印象深い一作なんじゃないだろうか。
雪や鉄道、温泉、紅葉などの風景描写がとにかく綺麗だし。
「慎ましく清潔な」吉永小百合と対照的な美を飾る芸妓とか。夫が精神病の前妻を殺させたあとに、吉永小百合が白無垢で山を花嫁行列するのとか、コントラストがよくて目が飽きない。時代の美を感じる。
夫の嫉妬でDVされるのが擬似SMっぽくて吉永小百合がセクシーとか、重ね合わせもとてもよくできている。「天国の駅へは一人でいかなければならない」とか、象徴的な部分も効いてる。
「本当の愛を与えてくれた」のは知的に障害のあるターボだったという展開とか、もうそういうのやめよう?と思うけど、全体的には力強い俳優陣に支えられた見応えのある映像になっていると思う。津川もいいけど病気の妻役もメッチャいい。
子供のころテレビでやってたら釘付けで見ちゃうかも。
最後ターボと二人ひとときの安らぎを得るけど。
その時その時、都合のいい気がする相手の与えてくれる、利益や愛を享受して幸せになろうとしてきていて、この時にはターボがその相手だったにすぎないという感じを脱していないので、真実の愛という説得力はあんまり感じない。
でも時代が時代なのかな…という感じもするので、腹が立ったりはしない。とりあえずラスト近くの山場の吉永小百合、肌が出てて綺麗だし。もっと脱いだからって女優魂見せつけたってこともないと思う。