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2001年宇宙の旅のFireFox917のレビュー・感想・評価

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)
5.0
2001年、400万年前に人類の急激な進化を促した地球外生命体に関する木星探査に乗り出した科学者達と宇宙船を管理するAIとの衝突等を描く。

知る人ぞ知るSF小説の巨人アーサー・C・クラークと巨匠スタンリー・キューブリックが脚本を書き、キューブリックによって映像化したSF映画の金字塔です。昔から何回も観ています。

冒頭の猿人がモノリスに触れて知的に進化し、その猿人が道具にしていた動物の骨を空中に投げるとスッと宇宙船に置き換わるシーンは、一瞬にして400万年の進化の時を超越する神秘的で秀逸な演出です。
さらに、ここで使われている「ツァラトゥストラはかく語りき」の楽曲が、より神々しさを醸し出しています。

特撮ですが今から53年前、CGは商業的には影も形もない時代であり、これだけの宇宙や宇宙船等の映像表現が出来ることに改めて驚嘆します。CGで制作したと言っても普通の人にはほとんど見抜けないと思います。

また、宇宙ステーションや宇宙船ディスカバリー号等の内部、宇宙服等は少し古めかしさを感じますが、一周まわって部分的にはシンプルなデザインに美しさを感じます。

さて、ストーリーはいわゆる第一始祖民族とも呼べる宇宙のあらゆる知的生命体の進化を促した生命体が作ったモノリスという黒い墓石のような立方体の物体が鍵になります。
このモノリスは万能コンピュータの一種であり、進化を促す機能、電波送信機能、次元転送機能等の様々な機能を備えた物が登場します。本作では三つ登場します。

そして、人類が開発したAIがHAL9000です。このHAL9000のシンギュラリティを描いているところが、本作における知的な存在を多層構成にしており興味深いです。

本作は当初、解説のナレーションを挟んで進めていくアイデアでしたが、そのアイデアは白紙となり、観る者に解釈を委ねる、映像と音響を堪能することに重きを置いた作品となったため、より神秘的で難解な感じになっています。

そして、本作では知的生命体の最終進化形態は、固有の肉体を持たない精神エネルギーの様な状態であるため、難解なラストは人類がそのように進化することを暗示した内容を映像的に表現したと思われます。

その後の多くのSF作品に影響を与えた本作は、その生命進化の謎に迫るという壮大なストーリーと共に、クラシック音楽を用いて表現した類稀なる映像美には芸術的にも一見の価値が有るかと思います。

興味のある方は鑑賞後に同名タイトルの小説を読むと、映画と異なる設定もありますが、より本作を楽しむきっかけになるかもしれません。
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