ずどこんちょ

2001年宇宙の旅のずどこんちょのレビュー・感想・評価

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)
3.4
わー!待て待てストップ!
途中まではまぁまぁ楽しめました。理解不能、解釈が困難と有名な難解映画の一つですが、途中まではついていけました。
謎のモノリスの出現によって人類の祖先である猿人が武器を持つという進化に至りました。この冒頭とか全く台詞がないのに、神秘的な感動に包まれます。
時は流れ、モノリスは再び月面で発見されます。やがてモノリスの発信先である木星を調査するため出発した宇宙船内では高度に発達したAIによる人類への攻撃が起こり、人類は進化したAIの脅威に晒されて……。

ここまでは分かりました。ここからが大変。
おそらく難解と言われているのはこの先です。一人生き残った船員が、モノリスと遭遇。色鮮やかな光に包まれ、おそらく時空が歪み、気が付いたら謎の部屋の中。自分の年老いた姿が断片的に現れては消え、やがて力尽きた彼は光に包まれた胎児の姿で地球へ帰還する……。
……はぁ??
どうやら調べたところによると、モノリスの導きによってあの船員は人類を超越した存在"スター・チャイルド"と進化したそうです。
なるほど、AIの進化という人類の脅威を描きながら、それすら打ち勝ったボーマン船長はモノリスの導きで更なる進化を遂げたのです。肉体という人類最大の弱点を克服し、精神的な存在となったのでしょうか。
スター・チャイルドにどのような叡智が宿っているのか気になります。

最後のこの展開が曖昧で難解なのは間違いありません。途中の広大な宇宙や飛行する宇宙船を描いたシークエンスがやたら長く、退屈な気分になるのも分からなくはないです。もはや宇宙を描いた芸術作品。
キューブリック監督の頭の中にある宇宙妄想、SF妄想をただ映像で表出したものとして捉えると作り手側の感性が伝わるようで、まるで絵画作品を眺めている時と同じようです。

それに、CGのあまり無かった当時としては革新的な映像技術も素晴らしいです。
ドーナツ状の宇宙船の中で走り続けるシーンや、壁と思っていた側面を無重力で歩き続けるシーンなど、どっちが上で、どっちが下なのか分からない。どうやってこの地球でこれらの無重力空間を撮影したのか気になります。
それに不安を煽るような音楽も印象的でした。

半世紀以上も前の映画に現代のタブレットが出てきたことにも驚きました。どなたか未来からタイムスリップしてきたスタッフでもいたのでしょうか。そのくせ映るモニターは画質も音質も昔っぽい。
そもそも、人類が月面着陸に成功したのがこの翌年である1969年です。米ソの宇宙競争真っ只中で、まだ人類が月面に到達できていなかった頃に本作が製作されたというのだから驚きです。
当時の宇宙SFとしてのみならず、今と比べても宇宙科学分野の最先端を取り入れた映画だったと思います。宇宙食に関しては今はもう少し食べ物に近い形に進化していて良かったです。

それにしても未来人って、変な帽子!