おこのみやき

2001年宇宙の旅のおこのみやきのレビュー・感想・評価

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)
4.6
これほど画が力を持った映画は他に観たことがない。
ゆっくりと流れる時間は、宇宙の時間の流れを表現するために必然。

冒頭で交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の部分が流れるが、まさにこの曲は映画の内容を端的に表している。
神中心の世界から人間中心の世界へ、そして神の死へ。ニーチェは人間が末人と超人に分けられると語った。

その超人は、この映画の中で言えばAI「HAL9000」なのかもしれない。そしてHALは「神は死んだ、超人を教えよう」と説くツァラトゥストラの役割を果たしているのかもしれない。

人間(猿人)が道具を手に入れた瞬間からそれを武器として用いたというのは皮肉めいた描写だった。宇宙開発もまた然り。
そして、何より恐ろしいのはAIという道具も武器として使われかねないという示唆が感じられる点である。壮大な予言のようで、すでに現在その時代に突入していることは否めない。

そして、このような示唆に富んだすばらしい映画を作れる「人間」はもういないのではないかとも思ってしまう。宇宙という空間は身近になっているが、人間は猿人の頃から本当に「進化」しているのだろうか。

この映画は予言が当たっているからすばらしいのではなく、私たちに大きな疑問を投げかけ、議論を作り出しているという点からすばらしいと思う。