【再鑑賞】
『美しく青きドナウ』がまるでこの映画のために作曲されたかのように、真っ暗な空間を漂う宇宙船やその内装を飾る未来的なインテリアとごく自然に調和しています。
ひたすら緩慢で、油断すると居眠りしてしまいそうな序盤の猿人たちの営みを辛抱強く凝視していると、何百万年という途方もない時間を一気に飛び越えて、不意に宇宙空間へ放り出される感覚には何とも気の抜けた不思議な心地よさがあります。
優雅な映像と音楽にリラックスしているのも束の間、モノリスが発する強烈な金属音と共に、映画は緊張が張り詰める静謐なスリラーへと不気味に移行します。
HALの暴走を食い止め、木星に到着した瞬間に突入するスターゲートのアシッドでトリッピーな映像に酩酊状態に陥るや否や、真っ白なロココ調の部屋にたどり着き、あまりにも有名になり過ぎた感もある『ツァラトゥストラはかく語りき』が流れる中、スターチャイルドが地球を見下ろす怒涛のエンディングへ。
ひとつの映画の中で、あらゆるスタイルの映像表現が堪能でき、まさにタイトルが示す映像による「宇宙の旅」を体験できる至極のエンターテイメント映画だと思います。
