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2001年宇宙の旅の9のネタバレレビュー・内容・結末

2001年宇宙の旅(1968年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

人間が道具を手に入れた瞬間
思弁的


再鑑賞用メモ:
引用元

https://hbh.center/01-issue_02/

エイリアンが四百万年前(小説では三百万年前)の地球に暮らす類人猿のもとへ送り込んだ謎の石板(モノリス)は、人類進化の触媒にして教育装置だった。しかしやがて21世紀、月面でそれと同様なモノリスが発見され異様なノイズを発するが、この第二のモノリスは人類進化の水準をエイリアンに知らせる通信装置だった。そしてスーパーコンピュータHAL9000を搭載した宇宙船ディスカバリー号は木星(小説では土星)へ向かう途上、HALの発狂により漂流し、ボーマン船長は木星付近で巨大なる第三のモノリス、つまり星々すらその内部で複製し再構築可能な超時空間「スター・ゲイト」に飲み込まれ超進化を遂げる。

三つのモノリスがSFの三段階に対応していることに注目してほしい。第一のモノリスは外宇宙の知的生命を進化させるベく送り込まれた植民地主義的な教育装置であり、第二のモノリスはマクルーハンの言う「グローバル・ヴィレッジ」を彷彿とさせる、人間の内宇宙すら相互接続可能なメディアとしての通信装置であり、そして第三のモノリスは文字通りその内部に世界を複製し人間の生体情報すら分解し再構築してしまえる電脳空間にほかならない。モノリスの三段階は、まさに現代SF史そのものではないか。

ここで肝心なのは、クラークがこのエイリアンをウェルズ的な帝国主義的侵略者ではなく「星々という畑の農夫」(farmers in the fields of stars)として性格造型したことだ。宇宙で芽生えた知的生命体の進化を促進すべく干渉するこのエイリアンは、自身は身体を捨て精神と思考を金属とプラスチックの中に移植し、知識を空間へ、思考を光の中へ蓄積する方法論を発見して、ついに純粋エネルギーと化した銀河系の支配者(lords of the galaxy)なのである。
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