夜行列車に乗ったカリート

地雷を踏んだらサヨウナラの夜行列車に乗ったカリートのレビュー・感想・評価

地雷を踏んだらサヨウナラ(1999年製作の映画)
2.2
戦場カメラマン・一ノ瀬泰造が、カンボジアの内戦渦で、アンコール・ワットを撮影しようともがく映画

まぁ…描ききれていないなと感じました。

まず内戦についてですが、カンボジアがなぜ内戦下になっているか、作品内では説明が薄く、映画を見ただけでは状況がよく分かりません。
一ノ瀬扮する浅野忠信が、とにかく戦場で写真を撮りまくるのですが、それは「目の前で死んでいく人を撮影する」という戦場の外観撮影に過ぎず、本来の「内戦の状況を世界に発信する」という意義が薄れています。

ヒロインからも「あなたは戦争が好きなんでしょ!」という発言がありましたが、まさにその通りで自己陶酔の感覚が強いです。
姉の結婚式のため、日本に一時帰国したときの食事シーン。家族に対して兵士の首が吹き飛ぶ話を、嬉々として語る一ノ瀬泰造。

まぁそれはいいでしょう。作品のテーマは一ノ瀬に注視されています。

ただ、何故彼がアンコール・ワットに魅せられているのか、全然伝わってこないんですよ。

最初は特ダネを撮る!みたいな気持ちだったのかもしれません。「他のヤツにスクープを奪われる」とか言ってたし。
「困難な撮影をやりきる」という事に存在意義を見出だそうとしているんでしょうけど、それならもっとクメール・ルージュと当時の政権の内戦背景を描かないと、何故アンコール・ワットを撮影するのか、その意義が感じられませんでした。

アンコール・ワットを撮影する = 自己の存在証明、という構図がいまいち浮かび上がってこなかったです。

戦争映画、歴史映画、ドラマ映画…、そのどの側面から見ても中途半端な印象。

フータイゾー!!という子供の声が、やけに耳に残る。