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悪魔のはらわたの0000のレビュー・感想・評価

悪魔のはらわた(1973年製作の映画)
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ホラーと笑いの融合というところではアボットとコステロの『凸凹フランケンシュタインの巻』(1948)が、「アルフレッド・ヒッチコック、ジェイムズ・ホエール、クエンティン・タランティーノといった映画監督らは本作に『怖いときは本当に怖く、そして面白い場面は本当に面白い、という2つの要素を繰り返し配置し相互に強調させた最初の映画』という評価を下した」とWikipediaにある。けど例えば『ゴースト・ブレーカーズ』(1940)だって完全にホラーコメディだしホエールの『フランケンシュタインの花嫁』(1935)だってかなり積極的にギャグシーンを投入してる娯楽サービス感があるし『大鴉』(1935)なんかもゴッタ煮カオスって感じだし、ようわからん。
かなり後々のブレイクスルーとしては、『死霊のはらわた』(1981)がその分野において成し遂げたことは大きいと思うけど、それ以上にこの『悪魔のはらわた』が1973年にしてやっていることというのは当時の人はこのハイブロウに果たしてついてこれたのかという感じがある。
(わしは高校生くらいでホラー映画に手を出し始めたばかりのころレンタルビデオ店でこれのDVDを借りて初めて見たけど正直無理だった。「おえー超悪趣味な映画見ちゃった」って感じだった。近所のレンタル屋は古いホラーがあまり充実してなくて『悪魔のいけにえ』も『死霊のはらわた』も『ゾンビ』も置いてなかったのでそれらを見るより先に、なんかタイトル的に有名なやつかなと思ってこれを借りたのであった。)

とにかく耽美と退廃の名の下のグログログチャグチャの超不道徳ド悪趣味で、それだけで当時の大半の観客はドン引きで理解不能だと思うのだけど(1973年というと日本ではオカルト元年で『エクソシスト』や『悪魔のいけにえ』が同時期だけど、スプラッターやゴア表現は映画においてまだまだ過激化する前)、その全体にわたってコメディのノリで、コントのように演出されてるっていう。こんな映画はこれまでにないしこの後もここまでのものはあるか?? 究極のアナーキー。パゾリーニとジョンウォーターズの間にある感じ。でも『ソドムの市』もこの2年後。(でも『ピンクフラミンゴ』はこの1年前! 『マルチプルマニアックス』などになるともっと前なのでジョンウォーターズのセンスってやっぱすごい。)

しかも3D映画だというのが狂ってる。ハーシェルゴードンルイスのレバーベロンベロンを立体で見せるギャグ。ウドキア大熱演。意味わからない。面白い。

なんやかんやでラストとか芸術っぽい文学っぽい雰囲気漂わせて終わらせるのとかもすごい。(ラストの階段を引きで横から捉えた画は舞台劇っぽさも感じさせるけど『魔人ドラキュラ』『フランケンシュタイン』『黒猫』等ユニバーサルクラシックへのオマージュもありそう。)

こういうゲテモノ映画を、ウォーホルの名前につられて日本でも色んな文化人が見たのかして、例えば筒井康隆の短編『問題外科』とかまんまこの映画のワンシーンからのインスパイアだと思う。
淀川長治がめちゃくちゃ高評価したというのもすごい話。(同性愛とホラー映画という系譜ではフランケンシュタインという題材を通してのジェームズホエールからのポールモリセイ、そしてリチャードオブライエン『ロッキーホラーショー』がおそらくこの映画に直接感化されて作られてる。)
もしウォーホルの名前がなかったら(ウォーホルがプロデュースしてるんだからアートなんだろうという先入観がなかったら)どうだったのか、とも思う……。

一応フランケンシュタイン映画だけどウドキアは台詞の中で「ゾンビ」という言葉を使ってる。

操演コウモリ人形(剥製か?)が動きも含めて映画史上いちばんハイクオリティかもしれない。
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