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ブラック・ダリアのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・ダリア(2006年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

元ボクサーの2人の警官バッキーとリーは堅い友情で結ばれていた。リーの恋人ケイは元ギャングの情婦だったが、いまはリーと同棲中。3人はいつも一緒だった。ところが若い女性の惨殺死体を発見し、捜査の最中に相棒のリーが殺される。捜査に異常な執念を燃やすバッキー。この事件の裏には何が隠されているのか…?

「L.A.コンフィデンシャル」など犯罪小説で知られるジェイムズ・エルロイの最高傑作を巨匠ブライアン・デ・パルマが豪華キャストで贈るクライム・サスペンス。
40年代のロスの雰囲気もじつにうまく再現され、音楽や映像の色合いなど映像も美術もセットもかなり凝った大作ではあるが、いかんせんストーリーが複雑で分かりにくい佳作である。

腰の部分で切断された女性の惨殺死体。
女優志望のその女性エリザベスから浮かび上がるハリウッドの裏事情。
事件を捜査する2人の刑事が謎に挑む。

捜査上に浮かぶ倒錯的な愛やファム・ファタールなど、デ・パルマ監督の初期作を輝かせた要素も散りばめられているのはファンにはうれしい限りだ。
極端な長回しはないものの、いつもの分割画面(スプリットスクリーン)を多用するなど、いわゆるデ・パルマタッチも楽しめる。
映像的には2000年以降のデ・パルマ監督の作品のなかでは出色の出来。

残念なのはミステリーの結末である。
惨殺事件の真相は、ハリウッドの富豪がポルノ映画を撮影し、出演した被害者エリザベスが自分の娘マデリンに似ていたため、富豪の妻が嫉妬のあまり殺したというもの。
マデリンにはジョージと言う富豪の友人の実の父親がおり、ジョージは自分よりも美しい娘に似た被害者のエリザベスに夢中になってしまい、二重の嫉妬に襲われたというのが動機だ。

リーは先に真実に辿り着いており、富豪にゆすりをかけたため、家族の秘密を隠そうとするマデリンとジョージに殺されたという顛末。
真犯人への伏線がほとんどない上に、共感できるような犯人の動機への描写も乏しく、非常に唐突な種明かしである。

事件よりもバッキーとリー、リーの恋人ケイとの三角関係が印象的に時間が割かれているし、バッキーが惚れているケイと事件の共犯者であるマデリンとも寝てしまう節操のなさは、残念ながらハードボイルド(痩せ我慢)ではない。

必要最小限まで説明を省くスタイルが原作者ジェイムズ・エルロイの作風というが、ハードボイルドな空気を出すためのバッキーの独白のナレーションも情報過多。
その独白を「殺しのドレス」や「ミッドナイト・クロス」のように妄想や推理として映像に変えた方が事件に集中できたかもしれない。

40年代ロサンゼルスの雰囲気たっぷりなこだわりの映像と、実際には迷宮入りした難解な事件の設定は買いだ。
主要キャストの演技も申し分ない。
納得できるストーリー展開と結末があれば化けたかもしれない。
非常にもったいない印象の作品である。
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