odyss

姉妹のodyssのレビュー・感想・評価

姉妹(1955年製作の映画)
3.7
【昭和30年の日本】

BS録画にて。
姉妹もの映画です。私、姉妹ものって好きなんですよね。

しっかりしているお姉さんとやんちゃな妹。野添ひとみさんと中原ひとみさんのWひとみ(なんて表現は当時はなかったでしょうけど。約20年前のW浅野から連想)の主演です。中原ひとみさんはこの当時19歳だったんですね。でも、この映画での役柄と同じく、中学生から高校生くらいの年齢にしか見えません。実はお姉さん役の野添ひとみさんのほうが半年ほど年下なんですね。でもこの映画ではとてもそうは見えないんですよね。役柄どおり、野添さんのほうが数年年上としか思えない。

この映画では姉妹は比較的に恵まれた家庭の娘で、父が山奥の発電所に勤務していて母も弟3人もそこに住んでいるため、家族から離れて松本市の伯母宅に下宿しながら当地の私立女子学園(中学と高校)に通っているという設定。

この映画が発表された昭和30年という時代が画面からひしひしと伝わってきます。山奥ではバスが通る街道ですら舗装されていないし、松本市内でも舗装されていない道路が目立ちます。姉妹は冬休みになって山奥の実家に帰省するのですが、お母さんは「そろそろ帰ってくる頃だと思ってたわ」と言って迎えます。電話が一般家庭にはなかった時代なんですね。

景気が悪くて、「戦争になれば景気が良くなるのに」と発言するおとなに妹が食ってかかるシーンがあります。朝鮮戦争はこの2年前に終了し、朝鮮戦争特需が終わって景気が悪い方向に一段落した頃だったわけでしょう。発電所でも首切りが行われ、お父さんがそれに胸を痛めています。

結核で若い女性が亡くなる話も出てきます。昭和20年代には日本の結核での死亡率はかなり高かった。昭和30年には治療法はあったはずですが、映画内の女性は貧しいという設定なので、治療が受けられなかったのかもしれません。この女性の役をやっている城久美子さん、きれいですね。映画には数えるほどしか出演しておられないようですが、別の出演作も見てみたいものです。

最後にはお姉さんは嫁いで行きます。見合い結婚で、相手は安定した職である銀行員。実はお姉さんは父と同じ発電所に勤務する青年に淡い恋情を抱いていたのですが、彼は貧しい育ちで、今も遠くに住む親に仕送りをしなくてはならず、禁欲的な生活ぶりです。そんな青年とは結ばれない運命と達観した末の選択でした。

妹はそれに納得しません。花嫁衣裳を着た姉がバスで出かけるのを、妹が見送るところでこの映画は終わりとなります。作中、姉はクリスチャンで個人的な倫理観を重視しているのに対し、妹は世の中が悪いのは政治のせいだと考える傾向にあるように設定されています。妹は将来、姉と違う選択をするのでしょうか?
odyss

odyss