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続・さすらいの一匹狼のodyssのレビュー・感想・評価

続・さすらいの一匹狼(1965年製作の映画)
3.5
【保安官に味がある】

実は正編のほうは見ておらず、続編だけBS録画で見てみました。もっとも、正編とこの続編は主役も別俳優のようで、内容につながりがあるのかどうかも分かりません。

牛泥棒呼ばわりされて人を殺してしまった若いガンマンが、真犯人(本当の牛泥棒)を捜して旅をするうちに、駅馬車強盗3人に乱暴されて荒野に捨てられていた若い女を救います。彼は彼女を町まで運んで医師に預けますが、当時は未婚の女性が男に乱暴されたら傷物扱いで家族からも見放されてしまうという時代で、彼女に心理的に頼られた彼は、牛泥棒を捜す必要があるのに町から離れられません。そうこうするうちに駅馬車強盗3人組(そして彼女に乱暴した3人組でもある)の正体が分かってきますが、その一人が町の有力者の子息だったために、彼は逆に駅馬車強盗の嫌疑もかけられてしまい・・・・・。

この西部劇で特徴的なのは群集の描写です。最初は、主人公が牛泥棒の嫌疑をかけられて所有者と争いになるところで町の人々が集まってきます。そこで所有者を殺してしまった主人公は、銃で群集を威嚇しながらその場を逃れるのです。
次には、彼が若い女を助けて近くの町に運ぶシーン。そこで群集が彼女を見ようと集まってくる。
そして終盤、群集は町の有力者に扇動されて、彼が強盗の一人だと信じ、彼をかくまっている医師宅を取り囲み、彼を差し出せと脅します。
このように、物事を興味本位でながめ、扇動にたやすく乗ってしまう、無知で恐ろしい存在として群集は描かれています。
この映画では主役の青年を真に理解するのは医師、保安官、そして救われた女性の3人だけ。真実を守る個人と、悪役に誘導されがちな群集の対比があざやかです。

保安官の描写にも味がある。主役が牛泥棒の汚名を着せられた町から賞金付きお尋ね者のポスターが回ってくるのですが、妻と複数の子供をかかえて新しい家が欲しい保安官にはこの賞金が魅力なのです。月給90ドルという経済状況をぼやくシーンもあり、また有力者からは誰のお陰で保安官になれたと思ってるんだと恩を着せられるなど、保安官といえども人の子、カスミを食って生きているわけではないと同情してしまいますが、最後には保安官としての義務をきちんと果たすところがいい。現代のサラリーマンも色々つらいところがあるけど、こういうふうに最後は筋を通して生きたいものだ、などとつい自分に引きつけて見てしまいました。
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