明石です

用心棒の明石ですのレビュー・感想・評価

用心棒(1961年製作の映画)
4.7
ゴロツキが支配する村で用心棒を引き受けた男、椿三十郎の物語。ダシール·ハメットの『血の収穫』を下敷きに、黒澤明が時代劇に翻案した作品で、ハメットの小説が好きなので期待を大にして鑑賞。対立派閥を片っ端からけしかけ相争わせ、最後は自分で始末をつけるダイナミックなストーリーが素晴らしい。

知性とユーモアには恵まれながらどこか木偶の坊っぽい脇役的なハメットの主人公とは、全編通じて主人公の存在感が別物ですね。命を助けた相手からの感謝の言葉に際し「うるせえ、今酒で忙しいんだ」と、ハードボイルドな豪胆さは受け継がれつつ笑。

もともと話の筋や設定を、西部劇的なものから出発させたという黒沢監督のいわば原点回帰のような、万人が理解できる面白さが特色だと思う。偉大な娯楽作家の資質を持ちながらテーマ主義に呪縛されてきた黒澤が、持てる才能を解き放ち、のびのびと楽しみながら作り上げた生粋のエンターテインメント、てな感じで。

—好きな台詞
「用心棒にも色々ある。雇った方で用心しなきゃならねえ用心棒だってあらァ」
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