ストレンジラヴ

用心棒のストレンジラヴのレビュー・感想・評価

用心棒(1961年製作の映画)
4.6
「俺の名は桑畑三十郎...いや、もうすぐ四十郎かな」

「荒野の用心棒」(1964)は観たのだがこちらはまだ観ていなかったので観ることにした。いや、痛快そのもの。まず話が分かりやすい。そして天秤の如く力関係が巧みに入れ替わる。そして骨太の映像。やはりモノクロをやらせたら黒澤明の右に出る者はいない。極めつけは三船敏郎だ。やはり世界のミフネに触れないわけにはいかない。まず風貌がいい。引っ込めた腕に無精髭、徳利を持つ手つきも全く力みがない。自分から力を誇示することはあまりしないが一目見ただけで凄腕だと分かる。そして見かけに違わない剣の腕。単なるチャンバラには収まらない圧巻の剣戟に息ができなかった。本人曰く「剣と剣の動きから一旦離れ、ラグビーを参考にした」とのこと。言われてみればしっくりくる。相手のリーチの届かないギリギリのところを点と線で結んで動き、その中に刀捌きを嵌め込んでいる。この動きができる俳優は後にも先にも三船敏郎だけだろう。「羅生門」(1950)や「七人の侍」(1954)で見せた「生きるための剣戟」とは180度異なる「魅せる剣戟」をも自然体で演じてしまうあたり、横綱としてのミフネを噛み締めた。作品全体を通しても一切のムダがない、ただひたすらにかっこいい背中がそこにはあった。