Blue

用心棒のBlueのレビュー・感想・評価

用心棒(1961年製作の映画)
5.0
U-NEXTで配信され2023年に終了したBARRY/バリーというドラマがあります。エミー賞にもノミネートされた作品で、用心棒の影響をとても受けて作られたドラマです。ぜひ見て欲しい。
アフガン紛争から帰ってきたがPTSDをわずらい、社会復帰できぬまま暗殺者として暗躍しているというドラマで、1話30分のドラマで主演のビルヘイダーがシーズン2から最終シーズンまで監督、脚本、演出、制作総指揮をほぼ1人でやるのですが、コメディアンのビルヘイダーらしく黒い笑いをともなったドラマです。
このバリーというドラマで用心棒の事がジョークで出てくるのですが、なぜ黒澤明の用心棒がジョークとして出てくるのか気になっていました。
U-NEXTで配信されてるHBO作品でゲームオブスローンズ、true detectiveなど、黒澤明の映画を影響を受けて徹底的に研究して作られた作品があるので、単なるジョークのネタとして用心棒が使われている訳ではないと思いました。

それでしばらく考えて、あーそういう事か、とわかりました。ま、バリーというドラマは演じるという事はどういう事か、という主題テーマがあってその本質は自分はつかめてないのだけど、ストーリーの全体像はこの用心棒の物語とかなり似通っています。

用心棒の映画冒頭で町の二つの組のヤクザがなんとも間抜けな争いを大通りで繰り広げようとします。バリーでも2つの間の抜けたマフィアが抗争を繰り広げようとするし、用心棒というのは英語ならばボディーガードかなと思うけど、仕事の依頼を受けて暗殺する者も用心棒と言えばそうかなと思います。
そしてあーそういう事か、と思った点ですが、実はバリーを演じるビルヘイダーは黒澤明の野良犬で戦争帰りの新米刑事役を演じた三船敏郎に、戦争帰りのバリーと重ねているとは思っていましたが、用心棒の三船敏郎の役とはどうも合わないと感じていました。
野良犬は食べ物に飢えて彷徨う犬、用心棒も野良犬に近い存在、でも何か違う。
あまりに自分は三船敏郎に固執していた。

この用心棒の敵役の仲代達矢はどうか?
ビルヘイダーの顔は実はこの用心棒に出演している仲代達矢の表情にそっくりなんですね。しかも鉄砲が最大の武器である。あーそういう事かと思って仕事終わって映画を見たら、やっぱりそういう事だった。しかもバリーと組んでるフュークスもいましたw。多分、バリーを見た人なら用心棒を見て誰がフュークスなのかすぐにわかると思います。
あと一瞬で相手を殺す三船敏郎をイメージするシーンがバリーにもあります。

何度と見てる映画なのになぜすぐに気づかなかったのか、かつビルヘイダーの仲代達矢サイドから物語を見る視点というか、あらためてビルヘイダーは本当に凄い男だと思いました。

用心棒のレビューにまるでなってないのですがw、あらためて書くとU-NEXTで配信されてるHBO作品はバリーも含めて黒澤明や日本映画の影響と徹底的に研究した上で作られてる作品が多いです。
七人の侍にせよ、用心棒にしてもそのリアルな作戦と戦いが、チャンチャンバラバラ、チャンバラ時代劇/お約束のある時代劇を終わらせた作品として有名です。
しかしそれはお約束時代劇を終わらせただけでなく、勧善懲悪の物語ばかり量産していたハリウッドの映画そのものも一掃した。
もう子供じみた勧善懲悪物語など作ってられない、と意識を変えたのだろうと推察します。

お約束のあるドラマしか作れないテレビ局に対して配信系はR18のラベルを最初に見せておけばあとは暴力描写をしてもいいし、黒澤明の映画が公開された1950年代は黒人差別撤廃運動の公民権運動が盛んに行われていました。
ある意味ブラックライヴスマターの運動が盛んに行われ人権意識が高まっている今の時代ともリンクします。
同じような時代背景、新たなプラットフォームでお約束のある物語ではなく新たな物語を作る時に、黒澤明の映画のような作品を研究するのは必然なのかも知れないし、結果として残している。
HBO作品はそうやって有名作品を作ってきたけど、それすら指摘する人がいなく、漫画原作が頼みの綱の日本の映画やドラマは、悲劇としか言いようがない。

やっぱり黒澤明映画は面白いなと思いました。
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