まーしー

ディープエンド・オブ・オーシャンのまーしーのレビュー・感想・評価

3.5
母親が目を離した隙に、3歳の次男が行方不明になった家族の物語。

久しぶりに再鑑賞。
不倫相手の子どもを誘拐し、自分の娘として育てる女性を描いた『八日目の蝉』を思い出した。
『八日目の蝉』は、娘を誘拐した加害者側の視点。本作は、息子を失った被害者側の視点。
両作の視点は違うが、子どもを失った家族の悲しみ、実の親が違った子どもの戸惑いなど、共通するところも多い。

本作では、
・次男が行方不明になった時期
・9年後に奇跡が起きた時期
という、2つの時間軸で、その時々の家族の様子が描かれている。
多くの家族にとって、子どもに関することは最も感情を揺さぶられる。
母親を演じたミシェル・ファイファーが、時には泣き暮らし、時には周囲に当たり散らすのも納得。それほど家族にとって、特に母親にとって子どもはかけがえのない存在だと思う。

また、長男の姿にも心を抉られる。
彼の愛想ない言動は思春期特有の反抗的態度のようで、どこか違う。弟がいないことの淋しさ、弟から目を離したことへの自責の念が、思春期に爆発したかのようだった。
そして、そのような長男に腫れ物のように接する両親。
ぎこちない家族の人間関係は、次男が行方不明になったことに起因している。

このような家族の人間模様は、決して目新しいものではない。2時間のテレビドラマでも十分かも知れない。
だが、家族の感情の起伏がダイレクトに伝わってきて、鑑賞中、私も悲しみと喜びを繰り返した。
ミシェル・ファイファー主演の隠れた良作だと思っている。