@ シネ・ヌーヴォ 63
栗田ひろみのアイドル映画、ではなく笠智衆のアイドル映画だったのはさておき、東京から西へ移動するのと同じように人間の優しさがどんどん移動していくことにえらく感動してしまい、気を抜くとわんわん泣きそうになるのをぐっと堪えながら観た。
何より、人に優しくすることに損得勘定がないのがとてもよい。困っているから、ひとりぼっちだから、お腹が空いているから、寒そうだから、当たり前の優しさをみんなが持っていてその行動に押し付けがましい理由など持たせずに優しさが伝染していく。どっか変なこの「豊国」で生命を繋ぐのはつくられた笑顔でもキャッチーなコピーでもなく(もちろん森繁のエロと金でもない)、人間の優しさであるところがめちゃくちゃ好きだ。
それでもやはり呆気なく人は死ぬ。どれだけ愛されていてもどれだけ生きたいと願ってもあっさりと死んでしまうのならば、せめて転んでも殴られても這いつくばっても人としての芯を、核を持ち続けていたい。