koss

街の灯のkossのレビュー・感想・評価

街の灯(1974年製作の映画)
3.7
堺正章のヒット曲がタイトルだが、歌は流れず、歌詞内容とも全く関係しない、歌謡曲映画から隔絶した森崎東の独自喜劇。田辺エージェンシーが製作に参加しているから堺の希望でもあったのだろう。足を怪我した財津一郎をおんぶして走る堺の渋谷の街のゲリラ撮影のオープニングは驚異的な導入力。

ポン引き男とブラジル帰り老人と記憶喪失のアイドル。ロードムービーの旅に絡む、昔の恋と裏切り、失踪、逃避行と輻輳する物語。旅の遍歴は大船観音、四日市、彦根、京都、岡山、広島に原爆ドーム、岩国に関門橋、筑豊、有明海。だが観光的ではなく裏街道的な巡り。そこに女子プロレスやフォークバンドのガロも登場する。

輻輳する物語は笠智衆の銀行強盗で急変する。人生の哀感、権力への抵抗、庶民の反骨といった森崎のいつもの主題からは少し距離を置いている。ホロリとはさせない、あえてそこをハズそうとする。たが、ラストの「どっか変だぞっ」と欄干の上で歌い踊る堺はまさに森崎的な表現。

MA-1にベルボトムの堺の身体能力と軽妙さ、アンデス柄の服の笠智衆の飄逸さ、ポン引きなのに会社人間のような財津一郎、家を破壊する田中邦衛、整形女と整形医の研ナオコとフランキー堺のカップル、線路際の飲み屋の子沢山の吉田日出子、好色金持ちの森繁久彌と、結局、森崎ワールドにどっぷり浸かってしまう。
koss

koss