依羅

パトリオットの依羅のレビュー・感想・評価

パトリオット(2000年製作の映画)
5.0
初見時から20代半ばくらいまでは、親父の復讐劇にカタルシスを覚える程度だったけれど、今改めて観直すと、160分の中に何層にも積み重なった大切な要素があることに気付けた。

そもそも、これはパトリオット(愛国者)の話ではなく、家族を愛する1人の男の話だったんだなぁ。
結果的に、イングランドを敗北に追いやったから独立戦争の英雄=パトリオットになっただけで、ベンジャミンの動機は常に、亡くなった2人の息子の敵討ち、残った家族と仲間たちの守護に徹底していたように思う。

ローランド・エメリッヒならではのド派手なアクションは、戦争映画をエンタメアクション作品にまで昇華させていて大変観やすいのだけれど、決して戦争賛美にはならず、戦争被害へのフォーカスが強かった。
あれほど人が死んでいくのは観ていて胸が苦しくなるし、その要因であるタヴィントンに憎悪が向きがちだけれど、彼にも、「父親が名家の財を食い潰した」という背景があり、一考の余地はあると思う。
家族のために鬼神となったベンジャミンとは対照的な存在よね。
まぁ、生来サイコな人物なのかもしれないけど。

英軍による数々の残虐行為と、敗戦しても姿を現さなかったコーンウォリス将軍の描写によって、明らかにイングランドをヴィランとして位置づけてるけれど、先のフレンチ・インディアン戦争では仏軍とネイティブ・アメリカンのチェロキー族が悪役だったわけで、結局勝者が正義になってしまう、そんな皮肉もほんのりと感じられる点がまた魅力だよな。

決して大陸軍が正義ではなく、互いに被害を被ったことを忘れてはならない。

先の戦争の遺恨を超えて、ベンジャミンと信頼を築いたヴィルヌーヴ少佐、白人と黒人間の民族差別意識を超えて友情にまで発展したオッカムたちだったり、ちょくちょく胸が熱くなるシーンも入れてきてくれるのはさすが。


現代では古臭い家父長制のマーチン家だけど、加害的ではない点が好きなんだよね、個人的に。
こんな親父が良かった、の典型例じゃない?少なくとも俺はそう思ったよ。


いつまでも、俺にとって最高の作品の1つです。
依羅

依羅