TAK44マグナム

ペルソナのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ペルソナ(2007年製作の映画)
2.3
グラビアアイドル出身の女優、山崎真美主演のSFアクション。
共演に萩原聖人、鈴木砂羽、佐野史郎、森次晃嗣など。
アクション監督はドニー・イェンのマブダチである谷垣健治(「るろうに剣心」など)が担当しています。

思考や感情、記憶の全てを他人の脳に移植する極秘実験プロジェクト・ペルソナ。
その被験者となった女性医学者と少女。
ペルソナには肉体的にも超人化するという副作用があり、政府は軍事利用を目論んでいた。
研究施設を脱走した少女は、医者である男と逃避行を続ける。
その男こそ、少女の脳に宿る女性の夫であった。
研究所からの追手が迫る中、少女は究極の選択を迫られるのであった・・・。

・・・というお話です。
要は、なんだかわからんけど一人の脳に二人ぶんの精神が宿っている山崎真美が超人となって、研究所の魔の手から逃れようと戦うってことですね。

まず、基本的にこの映画は「山崎真美の体を張ったアクションを楽しむ」ための映画だと思うのですが、どうも作り手側は必ずしも、そうは思っていない節がありますね。
予告編をみると「ノワール・アクション」とうたっているので、アクション一辺倒ではなく、人間の暗部を描くというテーマに深く切り込んで、ドラマをちゃんと見せようといった感じなのかもしれません。
そのために、とにかくアクション要素が犠牲になってしまっています。折角の谷垣健治起用も、これでは空回りです。
山崎真美は意外といっては失礼ですが芝居もちゃんとしているし、脇を固めるキャスト陣も名前の知れた俳優さんを使っているのでドラマ部分が酷いという事は無いのですが、なにしろストーリーが面白いかというとそうでもないので、かなり辛いものがあります。
「これ必要?」といった無駄なシーンも多くて、ずっと萩原聖人が悩んでいるばかりで、いくらノワールといったところで暗すぎて嫌になっちゃいます(汗)。
出ずっぱりである萩原聖人の演技がくどく感じてしまうのも難点。まあ、これは観る人によって感じ方は違うでしょうけど。

ドラマ部分が、ちっとも先へ先へ進まない冗長なものなので、それならばと合間合間にちゃんと派手なアクションをかましてくれれば良いのに、アクションシーンは全編とおして2シーンしかありません。
中盤に病院内でのバトルがあるんですけど、あろうことか戦っている姿をまったく見せない演出がとられていて唖然ですよ。
「萩原聖人の目線でみせたい」という狙いがあるのも分かりますが、ただでさえカタルシスを感じられる場面が少ない映画なのですから、ここはちゃんと山崎真美が追手たちをぶちのめす姿を見せて欲しかった。
これは本当にダメだと落胆してしまいました。

他の2か所のバトルシーンも、それなりに山崎真美は頑張っているし悪くはありませんが、そこまで驚かされるようなアクションも無く凡庸。
画づらも面白味がないし、早回しの多用もよろしくない。
特典映像では、谷垣健治の熱血指導によって山崎真美がスコーピオンキックなどを習得する様子もみられましたが、いくらなんでもスコーピオンキック使いすぎです(苦笑)
山崎真美は戦隊ものにも準レギュラーで出演経験があるんですけれど、本作の格闘も何となく戦隊もの風に落ち着いてしまっていて残念でした。
もう一段、グレードの高いものを魅せて欲しかった。

そして、一番納得がいかないのが、クライマックスがコント化してしまっている事です。
それまで重苦しいドラマを見させられ、いよいよ悪玉の佐野史郎と対決となった途端に、ものすごく陳腐な演出が続出して、本当にどうしてくれようかと思いましたよ・・・。
特に、敵ペルソナとの戦いでの正拳連打の繰り返しはギャグの様に演出されてしまっているし、何よりも佐野史郎と森次晃嗣の対決シーンは完全なるコントですよ!
何だったんだ、森次晃嗣・・・・・って感じで笑えないし、ゲンナリしちゃいましたよ。
森次晃嗣は何といってもウルトラセブンだし、家も割と近所で道ですれ違った事もあるので悪く思いたくないのですが、少なくとも本作での仕事っぷりは、どうにも「やっつけ感」が拭えませんねえ・・・。
対する佐野史郎は、いつもの佐野史郎で安心感ありましたけれども(苦笑)。

それにしても、国家が関わっている極秘プロジェクトにしては全体的にショボいし、山崎真美には見張りさえついていないので脱走も簡単に出来ちゃうし(冒頭で一度、脱走しているのにも拘わらず見張りも拘束もなし)、どうして2つの人格が脳に宿ったら肉体や動作も強化されて、いきなり格闘超人になれるのかもサッパリ意味が解らないし、B級と言ってしまえばそれまでですが、正直いって劇場で公開するようなレベルには到達していないと思います。

唯一、雪がちらつく中での薄着のままの芝居は大変だったろうし、山崎真美は健気に頑張っているな、と。
ルックスは当然として、高身長なので見栄えも良いし、新体操で国体に出場経験があるほどなので身体能力も高く、まさにアクション派女優としてうってつけの逸材。
ムチムチなボディの躍動は、大いなる武器と言えるでしょう。
最近はあまり顔を見掛けませんが、武田梨奈などの台頭もあって僅かながらアクション女優の活躍する場も増えているので、山崎真美もその波に乗ってもらいたいですね。

まったくオススメできない映画ですが、シャワーシーンやヘソ出しルックもちょろっとあったりしますので、山崎真美が気になった方は観ても良いかもしれません。


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