Godfather

ニライカナイからの手紙のGodfatherのレビュー・感想・評価

ニライカナイからの手紙(2005年製作の映画)
3.5
舞台となった竹富島は、沖縄民謡「安里屋ユンタ」で知られる島だ。これはかつて琉球王国に実在した絶世の美女・安里屋クヤマを歌ったもので、竹富島には今でも安里屋クヤマの生家があるのだという。
私は昔、坂本龍一の「Beauty」というアルバムでこの曲を知り、以来、沖縄に行く機会があれば竹富島にも行ってみたいなと思っている(´-`)

蒼井優が演じるヒロインの名前が「安里風希」というところからしていきなりいい。
竹富島の風景も美しいのだが、カメラワークが上質で、絵に安っぽいTVドラマっぽさがまったくないのもいい。「カメラワーク全然ダメ、夕暮れの海のシーンなんか暗くて顔がよく見えない」なんて書いてるレビューもあったが、そこがいいんじゃないか。薄暗いシーンがちゃんと薄暗く撮れてるのがいいのだ。監督の熊澤尚人は岩井俊二が大好きらしいが、たしかに岩井俊二的な絵の良さがある。

台詞が棒読みっぽいのが気になるところもあるけど(とくに風希が子供の頃)、沖縄の方言がそうなのかもしれないと思えばそれほど気にはならない。
登場人物が無駄に叫んだり、泣きわめいたりしないところもいい。安っぽいJ-POPのBGMが流れたりしないのもいい。
蒼井優は(いつものように)とても上手い。上京してから出会うやたら厳しいカメラマンも、元アシスタントのねえちゃんもいい。

始まって1時間20分くらいまではかなりいい映画じゃないか!と思って観ていた。
しかし最後のラスト30分ですべてを台無しにしてしまったというか... なんというか、残念な映画だ。

日本人は「泣ける!」というキャッチコピーが好きな人が多い。そのせいか、安っぽいお涙頂戴シーンを山ほど入れたがるのが日本映画が陥りやすいところだ。
この映画のラスト30分にはそんな日本映画のダメなところがぎゅっと濃縮されている。センチメンタリズムに流されて凛とした美しさを失っている。
南果歩だって決して下手な俳優ではないのに、泣きながら延々と手紙を読むというアホみたいな役を長々とやらされて気の毒だ。
はっきりいって、いい映画に泣けるシーンなどいらないと思う。そんなに泣きたい奴はセカチューでも観ながら涙でも鼻水でも垂らしていればいい。

この映画のいいところは残しつつ、ダメなところを無くした改良作(?)ともいえるのが、熊澤尚人監督の次作「虹の女神 Rainbow Song」だ。上野樹里主演作のなかでも一番いい演技をしていると思う。本作の蒼井優も脇役で登場する。
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