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トータル・リコールのEikeのレビュー・感想・評価

トータル・リコール(2012年製作の映画)
3.1
ポール・バーホーベン&シュワルツネッガーによるオリジナル版の公開は1990年でしたから、既に30年以上の月日がたっております。
その間、CG技術導入による映像革新は著しかった訳で2012年にこの物語を最新技術でリメイクしたこと自体は理解できなくもありません。

しかしオリジナル版をリアルタイムで楽しんだ身からすると本リメイクはCGを全面的に導入した割にはえらく「小粒」にまとめられているのが意外。
もっとも、これはオリジナル版が異常なまでにスケールが大きかったと言うのが正しいのかもしれませんが。

基本のストーリーはオリジナル版に忠実。
登場人物の名前を含めオリジナルのおいしい部分はきちんと掬ってあり、細かな点で旧作のファンへのサービスも忘れていない。
ただ、舞台は地球に限定されており(オリジナルでは火星がメイン)SFとしてスケールが若干ダウンしている印象。
その代りと言うべきかオリジナルでは強調されてなかった階級闘争とその先兵となるロボット軍団がフィーチャーされています。

オリジナル版でシャロン・ストーンが扮したクェイドの妻役とマイケル・アイアンサイドが演じたエージェントの役割を本作では監督の奥方であるケイト・ベッキンゼール女史が一人で背負っており激しいアクションを含めて熱演。
もう一人ジェシカ・ビール女史が主人公の過去を握る役割でベッキンゼール嬢と火花を散らすWヒロイン仕様となってます。
主演であるコリン・ファレル氏に関しては演技面はさすがに手堅いのですがシュワちゃんと比較するとどうしても見栄えが冴えないのは仕方がないですね。
もしファレル氏を本気で生かすつもりだったらアクション・スペクタクルの要素よりは記憶を巡るサスペンスをもっと全面に打ち出すべきではなかったかと…。

その上でオリジナル版にあって今回のリメイクにないものは何かと考えて見ればそれは「アナーキーさ」だと思います。
その象徴が「バイオレンス」であり、オリジナルの指定が「R」(17歳以下は親の同伴が要)であったのに対して本作は「PG−13」(13歳以上は可)どまり。
オリジナル版においてはシュワルツェネッガー氏の持ち味を生かす意味でもバイオレンスの度合が高くても不自然さを感じさせない点が特徴的でした。
そのバイオレンスに加えてミュータント達の造形に見られたフリークショー的な危険な匂いが本作には見られません。

その意味でこのリメイク版はかなり「毒気」が抜かれた健全な印象なのだ。
そこは好みの問題でしょうか。
もしオリジナル版との比較しないとするなら(記憶を巡る)サスペンス部分に物足りなさは残るものの、アクション・スペクタクル要素の豊富な娯楽作としては誰もが楽しめるSF作品となっているのではないでしょうか。
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