クシーくん

ザ・ファーム/法律事務所のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ファーム/法律事務所(1993年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

リーガル・サスペンスの名手ジョン・グリシャム原作の映画化作品。トム・クルーズがアクションとハンサムを売りにしていないタイプの作品。とは言え、後半はアクションもりもりで退屈しないような構成になってはいるが。

法廷ミステリかと思いきや、事務所がマフィアと結託していて、大きな陰謀の渦中に巻き込まれるサスペンスへと転じていく。FBIと悪徳事務所の板挟みになる中、信頼出来る探偵秘書や兄弟や妻と協力しあいながら巨悪に立ち向かう中盤までは素直に面白い。

ただ…よく出来た話である事には間違いないのだが、後半から余りにも筋が複雑になり過ぎて観ている側を置いてけぼりにしている。FBIに情報提供すれば顧客情報を流した事で守秘義務違反となり、弁護士資格を剥奪されてしまう。かといってマフィアとズブズブの事務所に協力し続ければ逮捕されるか、或いは裏切りに気付いた事務所に殺されてしまうかの二択。二進も三進も行かなくなった主人公はどうすれば良いのか?

という所までは良かったが、事務所がマフィアから請け負っているマネーロンダリングとは別箇に、時間単位で発生している弁護士の依頼費用(タイムチャージ)の料金水増しをしているというセコい悪事に着目。
これは詐欺に当たるので、請求を顧客に送付するのは郵便詐欺に当たるとして、FBIが追う殺人とマフィアへのマネロンではなく、事務所がマフィアとは無関係に勝手にやっている郵便詐欺から顧客を守る態で事務所を独自に告発する路線に方向転換する。これならマフィアからも狙われる事なく、弁護士資格も奪われる事なく、悪徳事務所を潰せる…という作戦なのだが、後半のスリリングな展開に忙殺されて、この回りくどい作戦が作中で明確に説明されておらず、繁雑に過ぎる物語になってしまっていた。
奥さんとの不倫騒動やジーン・ハックマンのスケベな誘惑など、本来割くべき部分ではなかった人間ドラマに比重をやや置き過ぎたせいだろうか?原作では普通に会社から金を横領して、高飛びする話になっているらしいが、その方がシンプルで映画向きだったのではないか?

最初は余裕綽々の小憎らしいハンサム笑顔を巻き散らしていたトムが進退窮まって追い詰められていく演技は良かった。「宇宙戦争」もそうだったけど、焦燥感募らせておかしくなっていく演技上手いよねこの人。弁護士とは思えない身体能力を発揮しているのはいつものトム。

メンフィスが舞台の映画というのも新鮮味があって良かった。ザ・90年代な発色と音楽も好き。
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