Ricola

糧なき土地のRicolaのレビュー・感想・評価

糧なき土地(1932年製作の映画)
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あるスペインの村に住む原始的な生活を行っている人々を映したドキュメンタリー作品である。
この作品における芸術的特徴などを言及するより、ブニュエルが伝えたかった現実とその裏にあるメッセージの強さに圧倒されるべきだと思うので、あえて評価をつけることは避けたい。


文明が発展している都市部の目と鼻の先の距離にある村では、貧困で苦しむ人々が暮らしている。しかし彼らは清貧を実践した生き方を貫いている。
この生き方に対して生命の危機におののくと同時に、ブニュエルは人間のあり方の一つとして支持しているように思える。

特に子供たちの様子がなまなましい現実に置かれていて、目を覆いたくなる箇所もある。
チョロチョロと弱々しく流れる川に、子供たちはパンを浸して食べる。これが彼らのおやつである。
学校で学ぶ子供たちはカメラに鋭い眼差しを向けている。一方で見寄りがなく病で苦しみながら、岩の上で横たわり死を待つだけの少女も映される。

大人も満腹になることはないし、おまけに疫病が彼らを蝕んでいく。
しかし、彼らの心までもが貧しいことはなく、前述の通りむしろその逆なのである。自分たちの快楽や欲望のために生き物をむやみに殺戮したり、自然を搾取することはないのだ。
冒頭の都市部のお祭りの映像と比較することでそれは示されている。

清貧といえど、明日の生死も定かではないほどの深刻な状況下であり、それはその国の指導者次第とでも言うかのような作品の締めくくりのメッセージである。
この力強いメッセージからも、この作品がプロパガンダ映画であることは明らかだろう。
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