Kumonohate

人間模様のKumonohateのレビュー・感想・評価

人間模様(1949年製作の映画)
3.9
市川崑監督の実写映画最初期作。昭和24年。主人公は、どこまでも穏やかで底抜けにお人好しで完全博愛主義で私利私欲や俗人的恋愛感情など超越した男A(上原謙)。彼を中心に、美女A(山口淑子=辛い大陸時代を送った引き揚げ者だが心根は美しい)と美女B(月丘千秋=勝ち気で現代的自立志向のお嬢)と男B(青山五郎=男Aの友人だが性格は正反対の実業家)の人間模様が描かれる。

要は…神様に恋しちゃったらどうなるのか。神様を恋敵と決めつけるとどうなるのか。神様が好きなくせに天邪鬼だとどうなるのか。3者3様にシミュレートしてみた結果、人生のダークサイドを経験し最高を望むことの空しさを知っている人間が、最も正しい選択をする…という話…かな? そこそこ面白いがよくわからない。

まあ、一番の見どころは、29歳の李香蘭(山口淑子)もさることながら、頭のネジが2〜3本ぶっ飛んでいるものの言動はマトモで他人の幸福を第一とするような滅私のスーパー善人を演じる上原謙。全身から余計な力が抜けたヒョコヒョコした所作といい、イノセントな表情といい、邪気の無い物言いといい、この人にしか醸し出せないようなとぼけたピュアな味わいに満ちている。主人公が地に足の着かないアンリアルな存在になることを防いでいる。

上原謙を心ゆくまで堪能したい人にお薦め。
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