三四郎

人間模様の三四郎のレビュー・感想・評価

人間模様(1949年製作の映画)
4.0
映画ではなく舞台演劇!芝居がかった舞台的演出が大嫌いな私だが、この作品は素晴らしかった…。この作品深くて奥行きがある。好きだなぁ。
舞台演劇のような大袈裟でキザな身振りや科白、俳優女優陣の表情、そのアップ…、キャメラに捉えられている構図、どれも自然とは言えない、全く自然ではない。しかし…おもしろい。映画を魅せるテクニック、その斬新さに感服せずにはいられない!

ストーリーにも演出にも引き込まれたが、上原謙と山口淑子の演技がまた冴えていた。上原謙は決して下手な俳優でもなければただの二枚目でもない、そのことをこの映画が示しているように思う。彼の役柄からして黒澤明の『白痴』の主人公森雅之を思い浮かべながら見てしまったが、作品においても、キャスト、ストーリー、演出にしても、この『人間模様』の方がセンス、テンポ、テクニックどれをとっても優れているように感じた。市川崑監督の作品をあまり見たことがない上に、今まで舞台的演出がどうも鼻について苦手意識を持っていたが、芸術的才能を認めないわけにはいかない…。
それにしても、上原謙がこの作品の主人公には適役だった。彼以外には、この善良で容姿端麗で真っ直ぐすぎる神様のような役は演じられなかっただろう。上原謙になりたい!と思わせるくらい良い役だった。
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