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名づけてサクラの一のレビュー・感想・評価

名づけてサクラ(1959年製作の映画)
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主人公サクラは米黒人と日本人の混血児(劇中では半クロとも言われている)で、会ったことのない産みの母に会おうと、孤児院からもらわれていったアメリカの養父母の元を逃げ出して一人で日本に密入国する。ガッツありすぎ。いささかリアリティに欠けてはいるが、戦後基地問題を絡めた長谷川伸『瞼の母』のパスティーシュとしてなるほど感動的。子役の福田みどりさんも達者だし、主役級と言っていい中原早苗と月丘夢路が素晴らしい。優しいんだけどヤサグレてて不安定で、そして根っからガラが悪い早苗最高。早苗がサクラの産みの母・月丘を突き止めて初めて会って話すときのテンションが完全にゆすりのそれなの意味わかんなくて面白い。全体的に甘ったるくないのが好ましい。それに対してキッパリ強気に拒絶の姿勢を見せる一枚上手の夢路。しかし内心で虚勢と動揺のあいだを揺れ動く。孤児院のシスターをボコって聖堂に火を付けポリに追われるサクラが母の元へ向かうラストは夢路の独壇場。ちょっと泣いちゃう。焼かれるキリストの像のイメージだとか、シスター村瀬幸子のやや狂信的な描き方だとか、宗教まわりの描写に引っかかる部分あり。
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