10年以上前に観た時はカッセルのタガが外れたような色気の洪水に狂っただけで映画としてはいまいちって思ってた。記憶よりずっといい。幼かったんだね。
やくざな前科者ポールだけでなく、冴えないカルラも彼と渡り合う程度にはしたたかなのが最高にオーディアール。地味で真面目だけど彼女なりの欲望や野心を持ってて人並みにわがままで奸計も巡らして悪びれないその素直さが妙にエロティックでおもしろかった。「怒ってはいないけど借りがあるのは確かだから」っていう客観的でフェアな視点からちゃんと脅すの好き。だからこそハイと疲労感と保護司の謎に「…?」ってなりながらわけもわからず情熱になだれこんでいくラストが映える。
コピー機にオタオタする悪い男カッセルが観られる映画なんて他にあるのか?