IMAO

リード・マイ・リップスのIMAOのレビュー・感想・評価

リード・マイ・リップス(2001年製作の映画)
4.2
DVDで久しぶりに観直しました。この映画の何が好きなんだろう?やはりキャラクターの描き方が細かいところだと思う。もちろん、ヴァンサン・カッセルとエマニュエル・ドゥヴォスというフランスを代表する名優二人が演じているから、というのもあるけど、このキャラクターの描写がいちいち細かくて、その表現方法がとても巧み。
例えば、ゼネコンに勤めるカルラ(ドゥヴォス)はファーストカットから聴覚障害者であること、そして彼女が読唇術を使えることがわかる。着ている服もとても地味で、男っ気がまったく無い感じだが、彼女は物語が進行してゆくに従って変化してゆく。ただ、彼女には潜在的に女性としての欲望があり、そこも短いながらもキチンと提示されている。要するに愛に飢えているのだ。
一方、ポール(カッセル)は犯罪を繰り返してきた男だ。保護観察官から「将来はどうする?」と聞かれても「さあ」と答える。その場その場をやり過ごしてきた人生であることがわかる。手には刺青を入れていて、タバコはフィルターを取って吸う。そうした細かい仕草一つ一つが彼らの性格や人生を物語っている。
この出会うはずのなかった二人が出会って、物語を進行させてゆくが、一つ大きな共通点がある。彼らは社会から疎外された人物なのだ。もちろんカルラは普通の社会人として生活しているが、障害を持ちそのことに引け目を感じている。一方、ポールは犯罪歴があり、彼もまた行き場がない。そうした二人の「孤独」が彼らを引き寄せている。そうした条件がまず一つ。ただ、そこから物語を進行させるためにはかなり力技が必要だが、愛に飢えたカルラと何とか自分の人生を自分で切り拓きたいポール。彼らの孤独と欲望が伏線となり、物語をうまくドライブさせてゆく…
もう20年以上前の作品になるんですね。このあと、監督のジャック・オディアール、そしてヴァンサン・カッセルもエマニュエル・ドゥヴォスもフランスを代表する監督と俳優になっていったけれど、この当時はかなり低予算映画だったはず。なんか、とても勇気づけられます。
IMAO

IMAO