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栄光のランナー 1936ベルリンのodyssのレビュー・感想・評価

4.5
6年近く前に鑑賞した映画ですが。
ロシアのウクライナ侵攻で、スポーツの国際大会からロシア人が締め出されており、差別だという声も上がっていますが、政治とスポーツの関係は難しいと痛感される今だからこそ、その存在が強く思い出される作品です。

ヒトラー統治下のドイツで1936年に行われたベルリン・オリンピック。
ナチ・ドイツはユダヤ人差別国家だからボイコットすべき、という声がアメリカでは大きかった。
もっとも、そう言うアメリカ自体が黒人などを差別していたわけですけど。

のちに長らく国際オリンピック委員会(IOC)を牛耳ることになるブランデージの暗躍で参加が決まります。ブランデージという人物に改めて興味がかき立てられる場面です。

黒人ランナーであるジェシー・オーエンスは、そんな中でオリンピック参加を決断します。
なぜなら黒人の実力を知ってもらうためにはオリンピックに出で好成績を収めるしかないからです。

そしてベルリンで4つの金メダルを獲得するのですが、当初は競技場に慣れていないので実力を発揮できないでいた彼を助けてくれたのが、当時同じ競技でヨーロッパ・チャンピオンだったドイツ選手。
彼はフェアプレイを重んじたがために、オーエンスに破れて金メダルを逃します。
そのためにヒトラーの怒りを買い・・・
こういう複雑な事情を、私のこの映画で初めて知りました。

スポーツは政治と完全に別のものではありえず、またドイツ人にもフェア精神を守った人物がいたことなど、世の中の複雑さを強く感じさせられる秀作映画です。
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