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栄光のランナー 1936ベルリンのTOTのレビュー・感想・評価

3.8
第二次大戦前直前、走りが得意な黒人青年ジェシーが故郷アラバマを出て大学に進み、指導者に出会い、ベルリン五輪出場に向かっていく。
ジェシーの成長物語に、ナチスドイツのユダヤ人迫害とアメリカの人種隔離政策、スポーツと政治と金の問題などを絡ませて複雑な輝きを見せる。
少しエピソード過多かなとは思うけどスピード感溢れる映像や、タイトな編集、五輪会場の臨場感たっぷりなCGも相まって長尺飽きず固唾を飲んで見守った。
確かにジェシーはメダルを取る。
でも、その前後で描かれる、ライバルのドイツ人選手が語るナチスの優性政策、アメリカ代表のユダヤ人があう仕打ち、ジェシーの五輪以降の人生は、あまりに酷く、怒りと悲しみでいっぱいになる。

冒頭から物静かで言葉少ないジェシーの父親が印象的だった。
五輪代表選考直前に、黒人地位向上委員会が五輪出場はナチスの人種差別を認めることになるからとジェシーに出場辞退を勧める。
父親は、出場しても黒人差別は無くならないと深い諦念を見せるが、ベルリン五輪のラジオ中継を聞き入り、ジェシーの四冠がわかるや、声を上げるでもなくテーブルの上で拳をギュッと握る。
ジェシーの負けられない戦い、その勝利を誰よりも願っていたのは父親だったとわかる目頭が熱くなる瞬間。

アメリカ公開2月で日本公開が8月になったのは恐らくリオ五輪合わせと思うけど、そんな配給の思惑に気軽に乗っかって見ていただきたい。
見た後に色々調べて考えたくなる作品。
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