シネマJACKすぎうら

栄光のランナー 1936ベルリンのシネマJACKすぎうらのレビュー・感想・評価

3.9
ナチス政権下のベルリンで開催された1936年のオリンピック。これは、その大会で前人未踏の四冠を果たしたアメリカ代表ランナー、ジェシー・オーエンスの半生を描いた伝記映画だ。

ナチスによる”ユダヤ人差別”とアメリカ国内における”黒人差別”。物語はこの二つの人種差別を背景に、ベルリンオリンピック開催をめぐる”主人公ジェシーの葛藤”と、”アメリカ・ドイツ両国間での駆け引き”の二つを軸として展開していく。

本作最大の特長は、主人公ジェシーとジェレミー・アイアンズ演じるUSOC委員を”二つの中心点”とした、登場人物一対一の”関わり”にフォーカスしている点。
前者の”それ”は、時の体制や社会的風潮にとらわれない個人間の友情や真摯なやり取りが爽やかで、熱い感動を呼ぶ。一方で、後者は善悪の境界線が揺らめく、実にビターでリアルな駆け引きに満ちている。

この二つの異なる視点がコントラストとなって、この映画が極めてリアルなメッセージ性を帯びる結果となっているのだ。”キレイごと”では済まない世の中だからこそ、”キレイごと”を諦めない想いが胸に迫る。

終始、米国目線で描かれた”体”の作品だが、実はアメリカ資本は入っていない。フランス、ドイツ、カナダ合作の映画となっているのも面白い。

※出演しているネット番組でも本作を紹介させていただきました!

https://youtu.be/k-MUuioRlJQ